第6章 Rose prince (薔薇の王子様)
いつもは柔和に優しいユウだが、
グリムが絡むと母性本能なのか…
どこかお姉さん気質になってしまう。
「じゃあ、パパッと終わらせちゃおうっ!」
エースの真似して笑うユウが可愛くて
モヤモヤはあっという間に甘い角砂糖に変わった。
「しょーがねーなー」
「よっしゃあ!行くぞ!」
◆
その後、三人と一匹で薔薇を真っ赤に色塗り、白いクロスと赤いハートの椅子があるパーティ会場の準備を手伝った。十分過ぎるほどフォトジェニックな仕上がりだと思う。
マジカメ映え、間違いなし(監督生調べ)。
「これで、なんとか明日の『なんでもない日のパーティ』に間に合いそうだ。手伝ってくれてありがとう。ユウ、グリム」
「どういたしまして」
「………オレ様まだ許してねぇんだゾ」
「そんなこと言っちゃいけません」
「仲良くね!」と言ってグリムを抱き上げ、
ユウがデュースの横にくっついた。
ふわっと、太陽の光のたくさん吸い込んだ
マグノリアの花の香りがする。
真っ白で大輪の蕾を咲かせる花は、夜の闇が吸いつくような美しい漆黒の髪を持つ彼女に…とても似合うだろう。
デュースが脳内でそんな想像していると、思いのほか意中の彼女との距離の近さに気づき、顔が一瞬で火照り上げった。
ドキドキと心臓が体を殴り続ける音が聞こえる。
「……ユウっ」
「あ゛ッッ!!!!!」
突如叫んだエースのおかげで
この情けない顔をユウにさらさずに済んだ。
……と思う。たぶん。
「ハリネズミの世話忘れてたッ!」
◆
急いでハリネズミたちがいる小屋に向かうと、そこには赤の支配者ー寮長のリドル・ローズハートがいた。
リドルの腕にちょこんっと抱かれたハリネズミは、お腹を膨らませて満足そうだった。
「げっ!寮長……」
一足遅かった…と肩を落とすエース。
優しい手つきで小屋にハリネズミを戻すと、
リドルのピンヒールはまっすぐにコチラへ向いた。