第6章 Rose prince (薔薇の王子様)
ーハーツラビュル寮
「だ、だまされたんだゾッッーーーーー!!」
ここはハーツラビュル寮のとあるパーティ会場。
食べ物目当てに乗り込んだ魔獣の悲しい叫び声がこだまする。
「誰も”今日が”お茶会だなんて言ってねーじゃん」
「そうだぞ。働かざる者食うべからずだ」
そういう二人組は、首に立派な赤い首輪をつけてペンキを持って薔薇を塗っている。魔法が使えない分、人手不足なのだろう。逃げられる前に「お前の担当ココね。よろしく」とグリムに指示を出すエース達。
これが噂のトランプ兵のように一致団結し、
任務を遂行するという奴か……。
「なぜにオフられてる……?」
寮長であるリドル先輩のユニーク魔法
”オフ・ウィズ・ユアヘッド(首をはねろ!)”が綺麗に二人にかけられていた。
◆
「ユウ~聞いてくれよ~。
ノーコンデュースのせいでさ、
テストの回答用紙が
寮長の目の前に落ちて…」
ユウを見るやいなや、喜々としてエースが肩に手を回した。エースなりのアプローチである。
だがユウは、さりげなく作業していた手を止めているあたり、これがサボり常習犯のテクかぁ…と内心感心していた。日頃の行いの悪さが裏目に出た瞬間だった。
「エース!……そもそも、
お前だって赤点取ったのが悪いんだろ!」
「万年赤点のデュースくんと一緒にしないでください~」
「…なんだと」
どうか、
私を間に挟んで喧嘩するのはやめて…。
まあ、事情はだいたい理解した。
「二人とも、
リドル先輩に赤点がバレちゃったのね。
それにしても……
もうグリムを騙すような事言っちゃダメだよ。
次は怒るからね…」
「べ、べつに……騙すつもりは」
「手伝ってくれたら、
後日誘うつもりだったし~」
珍しく怒った口調で伝えると、素直なデュースはズーーンと見るからに落ち込み、エースはもごもごと拗ねた。
「素直に手伝ってほしいって言ってくれたら、
私も手を貸すよ。
二人にはいつも助けてもらってるんだから!
わかった?」
「「はーーい……」」
「ユウっーーー!!
オレ様の味方はユウだけなんだゾ!」
飛んできてユウに頭をこすりつけるグリムに、「………チィッ」と内心舌打ちする二人。