第5章 No(契約なんて致しません!)
いつもお世話になっている友人たちを見て、やっぱりこれしか自分にはできないと…覚悟を決めてエプロンを締めた。
「監督生、ごはん作りますー!
…食べる人は手をあげてー」
「ハイハイハイッ!オレ様食べるッ!」
「オレ、甘いもの食べたい~」
「面目ない。
僕も運動後はお腹が空いてしまって…
ユウが作ってくれる料理なら、
なんだって食べるぞ!」
「…そういりゃ腹減ったな。
パンは腹持ち悪ぃから、肉が食いてぇ…」
「肉っ!?……迷惑じゃなかったら、
ぼ、ぼくも食べてもいい…かな?」
「はあい。甘いものとお肉と卵料理っと。
エペルからもらった美味しい林檎が、
まだ余ってるからデザートに何か作ろうかな。
セベクはどうする?」
冷蔵庫の中を覗き込んでい
手際よくメニューを考えていく。
「フン…僕は若様を探すという任務があるのだ。
ここで油を売っている暇などない」
「……(でも、ソファから起き上がらないんだ。)」
「こいつ起き上がる気配がねーんだゾ…。
子分の作る飯食べてからいきゃーいいのに。
馬鹿なやつ~」
「うるさいぞ!!!!!」
真っ赤になり怒るセベクは
本当はごはんが食べたかったのか、
いつもの1.5倍うるさかった。
全員が同時に耳を塞ぐ中、セベクの携帯がピカピカと点滅しているのをジャックが指摘した。
「うるせっ。…セベク、携帯鳴ってるぞ」
「ん…?ああ、すまない。
シルバーからか…なんだ、脅かすな」
数十分前に来たであろうその文面には、『マレウス様は無事寮に戻られた』という内容と、『ユウを抱えたお前を親父殿が目撃してな…。深い意味はないと言ったんだが、赤飯を炊くと言って夕食を作っている。…お前のことは忘れない』という殺人予告がそこに綴られていた。
なにが一番恐ろしいかって……。
それは、言わずもがなリリアの料理である。
昔食べた毒々しいセメント味を思い出して、セベクは口を抑えた。メールを見た瞬間、体中が拒否反応で震えだし汗が止まらない。
「たすけて……(人間、しょうがないから…
僕もご相伴に預かろう)」
「「逆ッ!逆だよ…セベク(クン)!」」
なんとなく皆、事情は察した。