第5章 No(契約なんて致しません!)
ーオンボロ寮 談話室
「ったく…オクタヴィネルの悪徳3人組が揃うと
ロクなこと事ねぇな…」
「はぁ…っ此処までくれば、
もう大丈夫…かな?」
「ハーっハーっ…あの先輩、
なんか怪しい~って思ってたけど
まさかフロイド先輩たちが絡んでるとわね」
「ふなぁぁっ……オレ様…もう、疲れて…
おなかペコペコなんだぞぉ…」
皆息を切らしながら、逃げるように1年生のメンバーでオンボロ寮に辿り着いた。途中、男子高校生のスピードに遅れたユウをセベクが抱きかかえ、疲労困憊のデュースはジャックがなんとかひっぱってきた。
力尽きる様に、各々がソファに倒れていく。
ユウを抱えていたセベクも、レディファーストでゆっくりと地面に降ろすと、バタン…と勢いよく倒れた。
「ありがとう」とお礼を言っても、彼にしては珍しく小さな声で「か弱き者を守るのも…騎士としての務め…」と返し、ゼーゼーと肩で息をしている。
いや、どんだけ皆全力疾走したの。
そんなにオクタヴィネルの先輩たちが
怖かったのかな?
目の前で倒れ行く無様な友人の姿がおかしくて、
たまらず「んははっ」と笑ってしまった。
「「「「笑い事じゃねーッッ(んだゾ)!!!」」」
5人と1匹の叫び声は、オンボロ寮をゆらし
綺麗に掃除したはずの天井から少しだけホコリが落ちた。
学園唯一の花である可愛い少女を守るため、
なんだコラ、やんのかコラなマブたちだが
肝心の異世界の少女はどこかずれていて
いつも、どこ吹く風で笑っている。
理不尽な学園長や、怖い先輩たちから
少しでも彼女を守るため…団結する1年マブ。
その努力が伝わらなくても、
たとえ、気づかれなくとも…
彼女が笑っていれば、まあ、いいか。
と結局ほだされた。
◆
もう起き上がってこないんじゃないか…と心配になる程ソファに沈んでいく5人と1匹の屍を前に、家主であるユウは…どうしたものかと考えた。
このまま転がしておくのも忍びない。元々言えば、自分の名誉のためにデュースが戦ってくれて、皆が助けてくれたんだから…。