第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
昔、マジカルホイールに乗って、ブレーキをかけずアクセルを踏み続けた記憶を思い出す。
止めるものはなにもない。
俺は……風!
足の重さも、ぬかるんだグランドも関係なく
デュースは自己ベスト最速の速さで
ゴールを駆け抜けた。
◆
「そんな馬鹿な………」
シナリオ通りだったはずなのに。
立ち上がり走ろうとしても、
間髪いれず行く手を雷が阻む。
(魔法で妨害しやがって…!ちくしょう!)
バレなきゃ自分のことは棚に上げ、応援している奴らに怒鳴ろうとした瞬間…
横から物凄い風圧を感じた。
一瞬だった。
本来動けないほどの
呪いがかかっているはずなのに、
その男は風のように
自分の横を駆け抜けていった。
一度もこちらを見ずに……。
そして、ゴールイン。
こんな結末、誰が予想した……?
◆
いつの間にか雨は止んで、先ほどの天気が嘘のように雲の隙間から光が差し込んでいく。
雨で塗れた体は、
汗と泥でぐっちゃぐちゃだった。
それでもゴールした後、
駆け寄ってきたユウが思いっきり腰に抱き、
顔にグリムがへばりついた。
体力の限界を超えた体は支えること出来ず、
あえなく全員一緒に地面に倒れた。
あとから、他のマブ達も駆け寄ってきたのか、
「あ~あ~」というエースのあきれた声が聞こえてくる。
「もう、デュースのバカ!
勝つなら心配させてないで、もっと余裕で勝ってよ!」
「やい、デュース!
途中負けるかと思って、冷や冷やしたんだゾ!」
勝ったというのに、
この二人はやんややんやとデュースの服を両方から引っ張って文句を言った。
これでも頑張ったんだぞ。
だが、心配そうな顔とセリフが一致していない二人を見ると安心して顔がほぐれていくのがわかった。
「ははっ…すまない。でも、
勝ったぞ……!ユウ」
もう一歩も歩ける気がしない。
だが、勝負の前にした約束を守れた。
弱弱しく拳を出すと、
ユウもコツンと拳をぶつけてきた。
それだけで僕は、
達成感と充実感に満たされた。