第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
「はぁ…っ…は、ぁ…僕の、僕の勝ちだっ!」
いい気味だ。
自分の力を過信したスペードを追い抜かした瞬間
胸がスッとした。
天候を大雨に変えるのは、意外と簡単だった。
この時ほど、自分がオクタヴィネル寮でよかったと思ったことはない。寮長のアズールと取引をして、僕は新しい力を手に入れたのだ。
同じように選抜から落ちた同級生に、成功したら報酬をくれてやると金で釣り、ゴールまで距離が半分になったら、先頭を走る人物に呪いをかけろと命令した。
案の定スペードの足は止まり、
力を温存していた僕がこのままゴールして幕だ。
スペード。お前に恨みはないが、
僕の成功への道を邪魔したんだ。
…しょうがないよな?
ああ。でも一つだけムカつく事があった。
学園唯一の女子生徒である監督生に、まるで正義のヒーローずらして、かっこつけてる所だよ。
この勝負が終わったら、泣きつくお前の顔見ながら勝者であるこの僕が……彼女の隣に立ったらさぞ見ものだと思わないか?
そう、弱者をいたぶる事を楽しそうに思案して
勝利を確信している男の足元に
次の瞬間、閃光が落ちた。
◆
ピシャッ!!
目が光で一瞬モノクロになる。次の瞬間、耳をつんざくような雷鳴が轟き、自分の足元に強大な雷が落ちたと分かった。
「なっ!……なんだこれはっ!」
あと一歩でも踏み出していたら、直撃だった。
恐怖で腰が抜ける。
大雨は相変わらず弾丸のように身を打ち、雷も相まって嵐のような天候だった。
先頭を走っていた男の前に、雷が落ちた瞬間をデュースは目撃していたが、足は止めなかった。
そこに、この場にはそぐわない
鈴を転がすような声が響いた。
「あきらめるなッーーー!!!」
足は止まらない。
しかし、声がした方向を勢いよく見る。
そこには、
必死に声を上げるユウの姿があった。
「デュースーー!!負けないでー!!」
(ああ……聞こえてる。)
「あとちょっとだよ!がんばれー!!」
(ちゃんと聞こえてるぞ。ユウ)
雨やら雷やら男どもの野太い声が耳を塞ぐ。
だが、どんなにうるさくったって
彼女の声は
ちゃんとデュースに届いていた。