第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
(…セベクだ!)
マレウスの護衛の見回りか、
運動場を巡回している様子だった。
「なんなんず‥‥‥その発言、
後悔させでやるや。
手袋拾えやゴラァッッッ!!」
先ほどの先輩たちの態度に
ついにキレたエペルが手袋を投げつけた。
グルルル…!と威嚇しているジャックも
手を掴んでいないと相手に嚙みつきそうだ。
(……噛みつく、……そうだ!)
デュースを苦しめている原因を追究する時間はないが、せめて彼を助ける手助けをひらめいた。
そう…
売られた喧嘩は倍にして返す。
ユウがこの学園に来て学んだ最初の知識だ。
「ジャック、エース、エペル!
力を貸して!お願いしたいことがあるの…」
◆
ヒューヒューと呼吸器官が悲鳴を上げる。
(……どうなってるんだ。足が……重いッ!)
まるで足に鉄の錘が繋がれている気分だった。
これまで走り込みを散々してきたが、
こんなことは初めてだ。
だが、ここで弱音を吐いてもしょうがないと重い足を引きずるように動かすが、大したスピードはでない。
「……クソッ!」とデュースは内心舌打ちをする。
追い抜かれ…
敵の背中を見るしかない自分が情けない。
ずぶ濡れになって水を吸った運動着が重い。
寒い。
ぬかるんだ地面に
ランニングシューズが絡め取られ、
普段より余計に体力を消耗する。
ーもう、無理だ。間に合わない。
今から挽回に回っても、
先に先輩がゴールするだろう。
「退部」という二文字が頭をよぎる。
だが、自分の行動には
不思議と後悔はなかった。
あいつが、…ユウが、
すごい奴だっていう言葉に嘘はないからだ。
走りながらユウを探して視線を向ける。
エース、ジャック、グリム、エペル…。
いつの間にか、セベクの姿もあった。
その中心にはいつもユウがいる。
個性の殴り合いみたいな協調性皆無のこの学園には、
問題児ばっかりの生徒しかいないはずなのに
なぜかお前がいる場所には
人が集まるんだよな…。