第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
ユウが真っ先に思い出したのは、
デュースの照れくさそうな笑顔だ。
『聞いてくれ!選抜メンバーに選ばれたんだ!
…母さんに報告したら、喜んでくれるかな』
『なあ、一緒に写真を撮ってくれないか?
写真の中だけでも、ユウを紹介したいんだ。
あ、えーと、変な意味はないんだ!
マブ、マブダチっていう意味でっっ……!』
そうして賞状を持ってツーショットを取ろうとしたら、シャッター直前でエースとグリムが変顔して乱入して来て、びっくりした。今ではいい思い出だ。
賞状を持った嬉しそうなデュースの笑顔。
びっくり顔の私。
変顔のエースと白目剥いたグリム。
撮った写真を見て、お腹が痛くなるまで笑った。
そして無事にケイト先輩の投稿でバズッた。
でも、その写真を
デュースは大事そうに待ち受けにしてたっけ…。
◆
ユウは唇を噛みしめて、拳を握りしめた。
ー私のせいで、デュースの大切なモノを
失わせてしまうなんて…
絶対に許さないっ!
ユウは目を閉じて、意識を集中させた。
(考えろ…考えろ…。打開策、、)
こちとら各寮長のオーバーブロット事件に、命張って何度も巻き込まれてきたんだ。
ーー先輩のしぐさ。話した内容。口調。デュースの調子が崩れたタイミング。原因。
脳内の神経が燃えて焦げそうだ。
もちうる限りの記憶を総動員して、
頭を回転させる。
その時、耳障りな声が聞こえてきた。
「ダッセー!威勢のいいのは最初だけかよ。
しょせん1年坊主だな~」
「ハハハッ。
女の前で見え張ってボロ負けとか見てらんね。
正義のヒーローごっこは
NRCじゃ通用しねーってこった」
「ぎゃはは」と男の取り巻きの笑い声だった。
「……オイ」と地を這うような低い声が頭上からする。
血の気が多いエペルとジャックが血管を浮き出して、今にも飛び掛かりそうだ。
エースも関心がなさそうな無表情だが、
先輩たちに見えない手の裏に
マジカルペンを握りしめている。
今すぐにでも一発触発の雰囲気だったが、
ユウが、ふと周りを見渡した瞬間。
……視界の端っこに、
ミストグリーンの髪色が目に入った。