第18章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)中
まあ、これも一興。
かれこれミドルスクールの頃からの付き合いになったアズールにとって、惚れた腫れたに振り回されるジェイドなんて見たことがないので、正直ちょっと楽しんでいる節がある。
そんな恋するウツボの面白い…いえ。悩める姿がもっと見えそうな案件が目の前の光景に広がっていた。
「あれ、ほっておいていいんですか?」
人差し指でピッとある方向を指すと、ジェイドはたちまち魚の苦玉を嚙んだような表情をした。
普段、動揺を滅多に表に出さない男が…。
アズールは段々と気分が乗ってきて、自然と頬が緩んでいく。それに対し、同じ笑顔でも「せっかく見ないフリをしていたのに、指摘するとは…ぶっ殺されたいんでしょうか?」と目の奥から怪しい光を宿したジェイドが微笑み返す。
ニコニコと表情だけは笑顔の二人だったが、周囲の温度が氷点下まで下がった。吹き荒れるブリザードは凍てつく冬の海ようだ。サバクローの獣人達はしっぽが自然と足の間に入り、隣に座っていたイグニハイド生は食器をぶちまけながら必死に逃げた。ディアソムニア生が魔法障壁の呪文を唱え始める。…カオスである。
今日の食堂はどうしたものか…と、見ていたシェフゴーストもため息をついた。そして反対側で起こっているもう一つの騒ぎに目を向ける。奇しくもそれは、アズールが指を指した方角と同じ所だった。
そこには、沢山の貢物(もとい食料)をテーブルからはみ出すくらい献上されている監督・ユウと、隣に座って大喜びしてごちそうに食らいつくグリムの姿があった。