第18章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)中
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今学園内で最もホットな話題と言っていい彼女。
巻き込まれ体質も伊達ではなく、かわるがわる求愛に来る男共を困り顔で眺めながら、いつものようにランチを食べていた。その図太さに、流石にエースとデュースがツッコんだり、もっと警戒心を持てと両側からガヤを入れる。
パートナーの魔獣・グリムは、かわるがわる男達が持ってくるごちそうに目を輝かせて、よだれを垂らして大歓迎した。
「子分にとってふさわしい男なのか、親分であるオレ様が確かめてやるんだゾ。どんどんもってこーい!ニャッハー!」
「グリム…ちゃんと貰ったものにはお礼を言うんだよ。
でも、こんなに食べてお腹壊さないかな…?」
「普段石でも草でも食ってるんだからヘイキっしょ。
てか、なんでお前はそんな動じないワケ?」
NRCには様々な種族の生徒が在籍しているが、本能が動物に近い獣人や人魚の生徒達がより優秀な男であるというアピールでさっきから肉や魚を大量に持ってくる。
妖精族の奴なんかはイタズラ好きも相まって、魔法でちょっかいをかけてくるから厄介だ。先ほどからユウの髪の毛が勝手に編まれたりしている。そんな中、普段と変わらない様子で食事を続けるユウを見て、エースは白目を剥いた。
「…なんか、今日は皆かまってちゃんだね」
「かまってちゃんってなんだよ?!?!」
思わずテーブルにスライディングを決める。
(オレをなんだと思ってんの?!
ツッコミもそろそろ限界なんですけど?!)
「…僕が言うのもなんだが。ユウはもっと男に警戒心を持った方がいい…と思う」
(デュースにセリフ取られるなんて!…あの、デュースに!!)
エースの内心は大荒れである。
頼むから、お願いだから。もう少し、男という物に危機感を抱いてくれ…。オレら以外の奴なんか特に。
一年生の仲良しコンビは百歩譲って許すが、それ以外の男がオンボロ寮に無理やり襲ってきたらどうするのか…。魔法も使えないユウの身を思うと、そう願わずには居られなかった。