第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
「いいゾー!デュース!
そのままかっ飛ばせー!」
大雨の中の応援合戦。
マブダチの名誉をかけた男の走りは、確かに本人が常日頃から言っているように「風のような」走りだった。
どんどん差が開いていく様子に、
見ている側も実力の差を肌で感じ取っていた。
「……デュース、すごい!」
「デュースクン、もうあんな所まで!」
「これは余裕で勝ちっしょ!」
結果は一目瞭然。
しかし…ゴールまで残りわずかというところで、
当然デュースの足がもつれる様に止まった。
「えっ!?」
エペルから悲鳴が上がる。
成り行きを見ていたメンバーも明らかに
スピードが落ちたデュースの姿に困惑した。
遠目から見てもその姿は明白で、先輩が連れてきた取り巻きの友人たちがニヤニヤとあやしく笑っている。
エースはすぐにデュースの周りに、
魔法痕がないか注視した。
ー雨で視界が悪く、探知できない!
ブロット許容量に関わらず、一度魔法を使えば必ず’魔法痕跡’が残る。簡単な魔法ほど魔法痕は小さく、分かりずらいが、魔法士のレベルが高ければ高いほど、例え0.001µmの単位でも察知することができる。
「あっ!」
そうこうしている内に、
デュースが先輩に抜かれた。
彼の足はまるで重石を付けたように、
一歩一歩がとても重そうだ。
それでも苦しそうに歯を食いしばって踏ん張り
二本の足を回転させている。
だが、
残酷にも二人の差は開いていくばかり…。
二人はレース前にマジカルペンを預けている。
明らかにおかしい様子に
第三者の介入があるのは明白だが、時間がない。
もうゴールまで半分を切っている中で、
犯人をすぐに見つけるのは至難の業だ。
応援する側も、先ほどまでの雰囲気とは180°変わり声も出せない状況になった。グリムのしっぽも落ち込んだ様に垂れ下る。
「そんな……」
ユウはデュースの「陸上部退部」が
脳内をよぎり、背筋が凍り付いた。
今まで彼がどれだけ頑張ってきたか、
その姿を間近で見てきた。
…こんな所で簡単に捨てていいものじゃない。