第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
結局ブツブツ小言を言いながらも、教室までエスコートしてくれたレオナ先輩。後ろ髪を引かれる思いではあるが、何分学生として本分を全うすることを許してほしい。
「守ってもらった上に、教室まで送らせてしまって…。すみません」
俯きながらお礼を述べると、レオナは大袈裟にため息をつきながら首を左右に揺らしながらその大きな手でユウの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわす。
「そこは、『ありがとうございます』だろーが」
そう言って、一度も持たせてくれなかったユウの鞄を返してくれた。不良揃いのNRCの中でも、やっぱりこういう所は王子様なんだなと変に関心する。
「えへへ…。
ありがとうございます! レオナ先輩」
花もほころぶような可憐な笑顔。
獅子の施しを抵抗もなく受け入れ笑うユウに、照れ隠しかプイッとそっぽを向くライオン。尻尾は素直に左右に揺れていた。
「それでは…」
そう言って教室の中に入ろうとしたユウに、自分にしては珍しく親切心が芽生えた。
「…ユウ、これは忠告だ。
この学園で少しでも長く生きようと思うんだったら、
……守ってくれる男を見つけろ。
出来るだけ、力と権力がある奴を選べ」
…俺とか。
と心の声が漏れそうで内心自分に舌打ちをした。
だが、せっかく親切で有り難い助言をくれてやったと言うのにこの草食動物は相変わらずキョトンとした顔で見つめ返してきやがる。恋愛面に関しては壊滅的にニブいらしい。マァ、鈍くないとこの環境ではやっていけんだろうが。
「守ってくれる、男…?」
理解が遅いのか、認めたくないからか、一言一句噛みしめるようなオウム返しだった。
「番…ああ、人間的には”恋人”か?
誰でもいいから、力ある男に守ってもらえ。
そうすりゃ、過保護なカラスや日頃のトラブルもちったぁー減ることだろうよ」
「こ、こ、恋人…っ?!」
たかだか色恋の話で頬を薔薇色に染め、初心な反応は男心をくすぐる。あと少し色気が欲しい所だが、これはこれでイイな。
親父臭い事をレオナが思ってるとは露知らず…今朝のジェイドとの急接近を思い出し、ユウの体温が上昇する。