第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
全てが終わった後。
流石に、俺に対しての態度は変わると思っていた。
忌み嫌われる砂漠の力。
ユニーク魔法が開花した瞬間の時と同じだ、と。
強大な力に怯え、媚び諂う顔しか見せない宮殿の人々しかレオナは知らないからだ。
“どうせ、お前も……
俺を恐れ、忌み嫌い、陰で笑うのだろう”
だが、対面して一言。
あいつは…
ユウは、笑いやがった。
しかも、ただの笑いじゃねぇ。
大笑いだ。
”「お、おじたん…。プ、ぷはははは!」”
あの吹き出したアホヅラは一生忘れねぇ。
その後、感情に任せて本来尊ぶべきと長年教わってきた女を追い回したのも初めてだった。
あれだけ恐ろしい姿を見せたと言うのに、下手したら大怪我をさせていたかもしれないのに。
この女は眉ひとつ動かすどころか、笑って水に流しやがった。こっちがどれだけ緊張したと思ってやがる。
強い女だ。
レオナはあの瞬間そう思った。
タフで力強い女が美徳とされている夕焼けの草原。
魔法が使えなくとも、力が弱くとも、
今まで出会った女の中で、
誰よりもタフで、
誰よりも美しい。
アホヅラと普段なら笑い飛ばしたその笑顔が、
どうにも眩しくて、この世の何よりも愛しいと感じた。
あの一件から、口には出さないもののレオナの中でユウの力を認めていた。認めたからこそ、力を貸してやることもやぶさかでない。
…やぶさかでない、のだが。
「えーと…ロッカーに雪崩れるようなラブレターが入ってたり、廊下で突然追いかけまわされたり、貢物と書いてある大量の食料やらプレゼントがオンボロ寮に届くくらいですかね?」
「悪い事は言わないから、学校休め」
頼むから、もう少し危機感を持て。
頼むから。