第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
(マ、今回の騒動については、
お前に非はないんだがな…)
寝そべっていた体をのそりと起き上がるレオナ。視線をユウに向ける。こんな状況でも授業を受けようと鞄をチェックする姿に、この女は危機感というものが死んでるんじゃないかと本気で思った。
「ユウ。
…お前、今日は授業休め」
「えっ…。レオナ先輩じゃあるまいし…。
そんな事出来ませんよ」
「グルルッ…。
一回痛い目見ないと、分かんねェみたいだな。
群がる野郎どもを見て、おかしいと思わないか?
…俺が助けてやらなかったら、あのチビに死ぬまで閉じ込められてたかもしれないんだぞ。
…お前がそれを望んでいるんだったら
俺が口を出す事でもないが」
「オルト君はそんな事しませんよ!
……でも、最近皆の様子がおかしい事は事実です。
レオナ先輩、何か知ってたら教えてください」
「…あ゛ーーー。参考までに聞くが、今まで何された?」
さっそく面倒な流れになったものだ。
事の顛末を張本人であるこいつに教えてやるなんて、面倒この上ない。…そういうのは、俺の仕事(領分)じゃねぇ。ラギー辺りにやらせとけばいい。
だが、一度乗りかかった舟。ましてや、か弱い草食動物だ。守ってやらないと、あっという間に強者の餌になってしまう。
魔法が使えない、ましてや腕っぷしも弱い女。
だが不思議な事に、強さとは力だけが全てじゃないとコイツを見ているといつも思うのだ。
力が及ばないなら知恵で。
知恵が及ばないなら他者の力を借りて。
圧倒的強者を相手にしても決して屈しない心。
何事にも多才で、生まれながらにして力があったレオナだが第二王子という立場のせいで、どこか諦め癖がついていた。
そこに突如異世界から現れた少女。
最初は、弱いくせにチョロチョロと足掻く姿を疎んだ。
目障りだ。
どんなに努力したって、運命は変えられない。報われない。ならばいっそ、無駄な事はしなければいいのに。
だが、結果はどうだ。
マレウスに吠えヅラかかせる計画が、最後に泥を食らったのは自分だった。
全部あいつ(イレギュラー)にひっくり返された。
しまいには、並みの魔法士でも怖気づくオーバーブロットと対峙しても、泣き言一つ言わず、周りの男達に指示してみせた。