第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「ねぇ、ユウさん。
一つだけ僕のお願い叶えてくれない?」
「お願い?…なあに?」
「僕のネイサンになって欲しいんだ!
兄さん、最近ずっとユウさんの事ばっかり話してるし
…ユウさんが傍にいてくれればもっと喜んでくれると思う!
僕と兄さんと…
ずっと一緒にいて欲しいなぁ。ダメ?」
ウルルンとつぶらな瞳が、ユウの胸にドスッと突き刺さる。だが、しかしこのかわゆいシュラウドはなんと仰せになった…?ネイサン…?
予想外のお願いに、頭にクエッションマークが浮かぶ。
コテっと首を傾げても、同じようにオルトもコテっと傾げるので、ネイサン発言は聞き間違でないかと現実逃避を試みた。だが、心なしか腰に回された腕(アーム)の力が強くなっている気がする。…これじゃ逃げられない。
「ホラ、俺が言った通りだろ。
お前は相変わらず、脇が甘ェーんだよ」
ひょいっ。
ほれみたことか。
まるで鬼の首取ったかと言わんばかりに、悪い笑顔を浮かべたレオナ先輩。
その表情を見て思わずムッとするが、その大きな掌でオルトの拘束から助けてくれたのも先輩だった。(まるでライオンがネズミを捕まえたような恰好だったけどね!)
「…っ!ユウさんを返して!」
焦って叫んだのはオルトだった。
普段兄の事以外で怒る姿なんて滅多に見せないが、感情がセーブ出来ないのか警告音のブザーが鳴り始める。
”ブーブー!魔導ビーム発射5秒前”と赤いブザーが周囲に鳴り響き、レオナは抜群の運動神経でユウを咄嗟に抱え直した。