第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「お安い御用だよっ。
ユウさんが悲しそうにしてる顔を見ると、僕も悲しくなっちゃう。なんでだろう、おかしいなぁ…。検索してもエラーばっかりでちゃうんだ…」
「オルト君っ…!」
なんて可愛くて、素直で良い子なの!
「よしよし、オルト君はいい子だねぇ~」
「へへっ。僕もお返しにぎゅーってするね!」
思わず抱きしめて、その燃えるようなサファイアの髪を撫でる。美しくキラキラと光る髪は、羽のようにふわふわと柔らかい。イデア先輩も同じ感触なんだろうか…?
ユウの抱擁にオルトは好意を返すように、腕を腰に回す。本当に可愛い。こんな可愛い弟がいるイデア先輩が羨ましいなぁ…。
「オイッ…そいつも男だぞ。
年頃の女ならもっと警戒心を持て」
「やめてくださいよ、レオナ先輩。
オルト君が汚れちゃいます」
「け、汚ッ?!」
「こんな純真無垢な天使は、この学園じゃめちゃくちゃ貴重なんですから。ハァ~可愛い」
グリムが癒し系アニマルセラピーであるならば、オルト君は心のオアシスと言ったところだろうか。
そういえば、授業終わりに必ずと言っていいほど、トレインの使い魔であるルチウスを撫でているユウの姿を思い出すレオナ。…女ってやつは。可愛いモノに目がないと遠い昔にどこかの雑誌で読んだ気がする。ほら、美容室に置いてあるアレだ、アレ。
それなら俺(獣人)の耳だって…。
カワイイ…だろ…。
まさか目の前の少女に愛でて欲しいなんて、百獣の王として口に出す事はプライドが許さない。思わずレオナの耳がぺしょっと垂れる。
だからと言って目の前の光景を許容したワケじゃない。明らかにオルト・シュラウドの瞳は執着の色を孕んでいた。