第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「はぁ…。
お願いだから、今すぐ消してね…」
「ううううっ…。僕の汗と涙の結晶が……。レポーターへの夢の第一歩が……。くぅぅ……っ。せめて何か見合う物ちょうだいよ!こんなの不公正だ!お願いだからなぐさめて!」
膝から崩れ落ちるように倒れ、床に手をつくジェイコブ。
こんなパパラッチまがいな行為でも、彼にとっては夢の為に努力した結果らしい…。
故意に女性を貶めようとしたわけじゃないみたい。そう思うと、憎むに憎めないような…その手段は決して許せるものではないが。
うーんとユウが唸っていると、これはイけると勘違いしたジェイコブの瞳が光った。
「僕もずっと、ユウチャンのこといいなって思ってたんだよね…。一回僕と付き合ってくれたら、許してあげてもいいよ!」
「は?」
「てか、キスしたくなってきた。ぶちゅっといかせて」
「ちょちょちょ、やめて!怒るわよ」
「魔導エネルギー充填開始。
充填完了後、最大出力でビームを発射します。
『最重要・護衛対象者“ユウ”』保護の為、敵を一掃します。30%…60%…80%完了」
「ちょちょちょ、オルト君も一回落ち着こうかッ!」
助っ人が登場してくれたかと思えば、魔導エネルギーを胸にチャージしているオルト君の姿が。一度発射している所を見たが、校内であれは危ない。学園長の小言が始まる奴だ。
「オイ、そこで何やってる!」
「レオナ先輩!」
「ヒィ…!オルトの次はサバナクローの寮長だと?!
オタクが調子乗ってスイマセンデシター!!」
さっきまでの威勢はどこへ行ったか、いつも通りのドモリ声で下っ端のように逃げたジェイコブ。
はぁ…悪い人じゃないんだけど、ね……。
とりあえずビームを収めてくれたオルト君と、声をかけてくれたレオナ先輩にお礼をする。
「ユウさん…怪我はない?
バイタルがちょっと早いけど、それ以外は問題なさそうだね。あ、さっきの彼が言ってたブログは僕と兄さんで徹底的に削除しておくから安心して!」
「(そういえば、オルト君は耳がすごく良いんだっけ)
…ありがとう、オルト君。
とっても助かる。」