第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
◆
前方に進むクルクルな赤毛を追っていくと、角を曲がった人気のない通路に差し掛かった。そこで不意にジェイコブの足が止まる。
何やらゴソゴソと見るからに怪しい動きをし始め、ユウがハッとして足を止めた瞬間には目の前に露出されたモノが広がっていた。
「見てッッ!」
「キャー!………って、パソコン……?」
ユウの視界には、目を輝かせ熱気を出し、パソコンを突き付けてくるジェイコブの姿が写った。
クラスメイトを露出狂の不審者だと勘違いしてしまい、慌てて恥ずかしくなる。
そんなユウの様子なんていざ知らず、オタク特有の早口で自らが作ったブログについて語り始めた。
「こ、コレ!僕が書いてるブログ…ユウチャン、読んでくれてたりする?」
「ちょっとジェイコブ脅かさないで。
ブログってゴシップ記事とかでしょ?読んでないよ」
「…キ、キミにはぜひインタビューさせてほしんだ。同じクラスメイトのよしみとして、い、いいだろう…?
内輪の独自調査では、ユウチャンが今一番学園でホットな話題なんだよ!噂のセクシー女子だってさ」
「噂の?…なんて?」
「ちなみに今コレが下馬評」
ジェイコブが見せてくれたノートパソコンを受け取って、画面に書かれている記事を読む。
「な、な、な、ななななにこれッ………!!」
そこには目を疑うような記事の数々が。
『NRCのマドンナ、ついに恋愛解禁か?!』『監督生のカレシ候補ランキング』。そこには、誰がユウの恋人に相応しいか投票されていたり、コメント欄には自らの寮長がふさわしいと豪語する声や、我こそはと名乗り出る声で白熱していた。
『彼氏候補一位、リドル・ローズハート…○○〇票。
一票差で二位、ヴィル・シェーンハイト…〇〇〇票。
同率三位…○○〇票エペル・フェルミエと、
………ジェイド・リーチ』
「今すぐ消して!!」
思いの外、大きな声が出た。
彼の名前を見た瞬間に、恥ずかしいやら、申し訳ないやら、色んな気持ちがごちゃまぜになった。