第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
かたや自分達の事で頭いっぱい。冷や汗ダラダラのチーム・スクラム。彼女に聞こえないように拡張魔法まで張る始末だ。
「…ほとんどの男が、お前のこと異性として意識して、抜け駆けされないように各寮手組んでました~。…なんて言えねー」
「しかもライバルしかいない環境で、いつ他の男に取られるか分からなくて、諦めるに諦めきれず…。
今がもれなくチャンスなんだ…なんて言えない」
「男にしか分からない男心ってやつだよな~」
「知った所で彼女が余計不安定になるだけだ。絶っっっ対に言わないほうがいい」
「ユウにも知る権利はあると思うが…。
いや、綺麗事はよそう。
…彼女の為を想って行動してきたが、き、き、気持ち悪い、なんて言われたら……、明日から生きていけない…」
「………寮長も可愛いトコあるんすね」
「煩い!お黙り!」
誰がどう伝えるか、皆悩みに悩み、責任を押し付け合い、相手に爆弾を投げたりして一向に問題は解決しないまま時間が過ぎた。
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「あ、あ…監督生ここにいたんだ。
クルーウェル先生が呼んでるから、は、はやく来て」
「あ、うん。分かった」
声をかけて来たのは同じクラス・イグニハイド寮生のジェイコブ。
彼はブログや学園新聞の執筆も行っていて、学園長から生徒の誕生日インタビューを頼まれる際によく顔を合わせる。いわゆるゴシップ記事ネタを書くのが趣味みたいで、学園の七不思議だの生徒の噂話などをネット上に書き込んでいると耳にする。…悪い人ではないと思うが、どこか風変わりな赤毛の男の子だ。
エース達一行に目を向けても、何やら白熱してて声をかけずらいし、これは長引きそうだ。
「ジェイコブと先生の所行ってくるから、グリムはエース達に伝言お願いね。すぐ戻るからサボっちゃダメだよ」
「ふ、ふなぁ…おい、子分!」
グリムが油断した隙に、彼女はジェイコブと共に行ってしまった。
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