第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
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廊下、階段、教室…。皆飢えた瞳でユウを眺め、隣にいる野郎共に恨めしいと呪い言葉を吐いた。俺たちだって青春したい!可愛い女の子とイチャイチャしたい!娯楽もなくむさ苦しい野郎しかない孤島で、恋人の一人も捕まえられないのならこの先の青春時代が全て灰色。お先真っ暗。そんな人生は嫌だと周りも必死だ。
だが腐ってもナイトイレブンカレッジ。
顔は良いが、女性への口説き方がエレメンタリースクールで止まってる輩しかいない。
ユウは先程から「ヒュー」と口笛を吹かれたり、ニタニタと厭らしい笑顔を向けられたり…。友人や先輩方が守ってくれているとは言え、ユウの気分は徐々に地に落ちていく。まるでサーカスに出る珍獣のように、じとじとと舐めまされるような視線が気持ち悪い。
「…さすがにおかしい。
もし知ってたら、これがどういう状況か教えて欲しいです」
ユウの周りをSPのように厳重警備していた五人の足がピタリと止まった。
マ、そうなるよな…。
誰もが同じことを心に思った。
当たり前の疑問だが、ユウから言われると胸が痛い。
「それはその、あの、ええと…」
皆、急に歯切れ悪くなる。
嘘が付けないデュースが顔面蒼白なのはまだ分かるが、エースや滑舌のいいリドル先輩までもが口を濁す。あからさまに「お前が言えよ。いや、お前こそ」と肩肘つつき合い始める面々にユウの片眉が吊り上げった。
「集合!」
ついには、リドルの号令と共にスクラムまで組み始めた。
突如仲間外れにされたユウは、一瞬驚いた顔をしたかと思えば唇を嚙み、ぎこちない様子で腕を組んだ。
女の子だからと遊びに誘われず、一人ぼっちにされ、傷ついた心を隠して強がっているみたい。ショックを受けた時、悲しい時、彼女は人知れず唇を噛むのだ。
グリムだけが、そんな彼女を見ていた。