第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
普段と変わらなずおおらかな笑顔で手を振るカリム。
あと少しで合流できると言う所で、前を走るユウ達の視線の先。つまりカリムの背後に回る生徒の姿が視界に入った。
「カリム先輩ー!うしろッ」
「え?」
「カリムッ!」
ジャミルがマジカルペンを振るうも、相手よりワンテンポ遅れる。
「オフ・イズ・ユア・ヘッドッ!!(首をはねろ!)」
勇ましい声と共に、魔法の呪文が唱えられた。
同時にガシャンと重たい鉄の首輪が掛かる。
「「「リドル(先輩)寮長っ!/頭!」」」
「…君たち、もう少し紳士的に振る舞ったらどうなんだい。
一人の女性に寄ってたかって襲い掛かるなんて、紳士としてあるまじき行為だ!」
フン…と赤い髪を靡かせて、上品な溜息をこぼす。我らがハーツラビュルの王にして女王様。制服姿の彼は、見かけは華奢だが魔法の火力は一級品だ。現にカリムの足元で首輪を付けられ芋虫のように丸まった生徒もリドルの魔法だ。
護衛対象であるカリムの身の安全を確認すると、ジャミルもようやく息をつく。「すまん。油断した!」と悪気もなく笑う主人の頭をぺしっと叩いた。
「リドル先輩!…あの、助けてくれて、ありがとうございました」
「おはよう、ユウ。
朝から散々な目にあって、大変だったろう。
だが、もう安心するといい。ハーツラビュル寮長であるこの僕が、未来永劫君を守ると誓おう」
「そんな大袈裟な…!でも嬉しいです。
お気持ちだけ有難く頂きます」
「(アレぜってぇー伝わってないヤツ…)」
「困ったら事があれば、遠慮なく言うんだよ。
それにしても…。
間違いがないようにエースとデュースを迎えに行かせたんだけどね…。(お前たち、あとで部屋に来るように)」
「「…ハァ(はぃ、寮長……)」」
リドル、カリムと寮長二人が揃った事により、周りのモブ達は遠くから様子を見守る体制へと切り替えたようだった。今まで押し寄せるような人並みも、噓のようにサッと散っていく。
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