第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
一同は生い茂る草に身を隠し、恋のチャーム魔法にかかった奴隷達の目を欺きながら教室へと進む。
「ジャミル先輩!…いつからユウとそんな仲良くなったんスか?」
「たしか先輩方と、絹の街に観光に行ったって聞いてましたけど…」
「ああ、その時に俺の妹にも偶然会ったんだ。こっちの世界に来て初めての女友達だってユウが思いの外はしゃいでな。…兄としては、複雑な気分だよ」
「ジャミル先輩そっくりで美人さんなの!
ナジュマちゃんとは毎日マジカメでやり取りしてるんだ~」
「そのおかげで、ツウシンセイゲン?がギリギリになったんだゾ」
「おまッ、だからか!絹の街に旅行行ってからずーっとケータイいじりまくってたの」
「エースみたいに授業中、隠れていじったりしてませーん」
「オレはお前と違って器用だからいーの」
「授業中にケータイをいじるのは良くないぞ」
「シッ」
こんな状況でも普段と変わらないマブ三人のやり取り。ある意味、三人とも肝が据わっている。ホントこいつら変わってんな…と内心悪態をつきながらも、次の瞬間目に入った人物を見てジャミルが会話を遮った。
そこには同じく茂みに隠れていたカリムの姿があった。
「お!来た来た。ジャミルこっちだー!
ユウも無事みたいなだな、良かった良かった!」
「馬鹿ッ!声がでかいんだよ!!」
せっかくお互い身を隠しているのに、普段と変わらないカリムの声量で周りの生徒達が「ユウ」という単語に耳をピクつかせた。
ジャミルの抗議もむなしく次の瞬間には、目が血走った男子生徒の集団たちの足元がドドドド…!と迫りくる音が聞こえる。
「やべ!見つかった。走るぞ!」
「だから、なんで追いかけやれてるの?!」
「質問はあとだ!カリムの所まで走れ!」
ジャミルをしんがりに、エースとデュースに手を引かれ思いっきり走る。さすがに息も切れてきたが、只事ではない雰囲気を感じては、口を紡ぐしかない。