第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「オイ、僕の真似するな」とボヤキながら、前方に群がっていた生徒達を拳ひとつであっという間に一掃したデュースが隣に来た。(闇落ちしない系バーサーカーでは?)
「ユウ、…僕の傍から離れるなよ」
むぎゅっと片手を繋がれる。
手袋ごしでも彼の熱い体温が、鼓動していた。
混乱状態で始終されるがままになっていたユウだが、ライヴのように白熱する生徒達の中から、二人に守られているということだけは分かった。だが、残念なことにパニくりすぎて、全然聞いてない。
「突然のモテ期がきてしまった!?」
「「……」」ズコっ
ユウからの「キャー♡カッコイイ!好き!」を目論み、頑張って朝早く起きる努力までしたエーデュースコンビの夢は淡く散った。知ってた、うん、知ってたよ…。お前ってそーゆー奴。
◆
阿鼻叫喚の愛の悲鳴がメインストリートに溢れる。男子校に一人の女子生徒とは言え、今まで問題なく通ってこれた。別の問題ごとはええ、それはもう山のように降ってきますが…それは置いておいて。
だが今日に限って、押し寄せる波のように大勢の愛の告白がユウ一人に降り注ぐ。パニックだった。
「…ど、どういうことなんだゾ!」
「落ち着け子分。…動揺しすぎてオレ様の口調になってるんだゾ」
「…ハッ!
もしやジャミル先輩の魔法が炸裂した?!それで、全員頭おかしいの?」
「…君も対外、失礼な奴だな」
「げ!……サラーム。ジャミルセンパイ」
「こいつ!普通に挨拶して誤魔化すんじゃない」
「ひ、ひしゃい!(いたい)ひっぱらにゃないでよー!ジャミルへんぱい~」
「フハハッ。
…朝からいいモノ(間抜けヅラ)が見れたよ」
「乙女に向かってなんて口の利き方。
そのうちナジュマちゃんに嫌われても、知りませんからねー!」
「フン、上等だ。
ま・ナジュマはともかく、ユウはどんな表情しても可愛いから気にするな」
「っ!…。またそういうこと言う!」
ポカポカとジャミルのパーカーを叩く姿はまるで、本物の兄妹のようで微笑ましい光景である。だが、彼女のナイトとしては突然現れたダークホースにいい所全て持ってかれた気分だった。