第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
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「「「「付き合ってくださいっーー!!」」」
目の前に突き出されたのは、赤、黄、青色のカラフルで可愛いお花たち。そして自分を選んでくださいと言わんばかりに、好意を告白する男子高校生の群れ。中には、花弁が歌っている花もいる。きっとハーツラビュルの喋る花たちだ。この人あとで、リドル寮長に首をはねられるぞ。アーメン。(心の中で十字を切る)
と、まだ朝は始まったばかりなのに何度目かの現実逃避中のユウは、突如肩を抱かれ、男子高校生の群れの中から救出される。
「おうふっ」
グインと急発進した衝撃はまるで遊園地にある絶叫マシーンのようだ。目が回り、情けない声が出てすこし恥ずかしい。…穴があったら入りたい。
助けてもらったのはありがたいけど、レディを雑に扱うなんてどんな野郎だコノヤローと喧嘩腰に相手を睨みつけると、レッドスートのハートがバシっと視界に入った。「おうふって何だよ。おうふって(笑)」と声に出さなくても、その表情を見れば奴の言いたいことが分かってしまい、羞恥と反発心で、怒りを込めて相手の名前を叫ぶ。
「エース!」
「ハイハイ、怒んなって~。せっかく助けてやったんだから、もう少しこのまま大人しくしてて」
エースに肩を抱かれ、その腕の中に守られるようにキュッと力を込められた。
視線を上げると、デュースがボディーガードよろしく「NO!タッチ!NO!キャメラ!(カメラ)」「GO WAY」と次々と蹴散らしていき、グリムはユウに近づこうとする者に所かまわず火を噴いた。
「邪魔すんじゃねッー!」
「おまえら、いつもユウちゃんといるじゃねーか!こんな時ぐらい譲れや!鬼!悪魔!」
「このチャラッポラー!!」
「優等生のガワを被った童貞ヤンキーがよ!」
「ユウちゃん…、オレ、本気で好きなんだ!そんな奴らよりもずっと君を幸せに出来ッ…ゴフッ!」
負け犬の遠吠えみたいに最後の台詞を放った奴の脳天に、もれなく大釜がヒットした。
「ちょっと、人のもんに手出さないでくれる?
はい残念。
オレの方が5億倍好き。出直してねェ~」
召喚者は、意外や意外。
デュースではなくエースだった。