第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
傍から見れば恋人同士にも見える距離感に、エースは「むっ」とした表情になる。デュースの癖に生意気!と言わんばかりに間抜けヅラした顔を押しのけ、ユウの持っていたカバンを華麗にひったくった。
「あ!」
「いいから、いいから。
早く行こーぜ。お 姫 様 ?」
「ああ。今日はユウの事を迎えに来たんだ。一緒に学園まで行こう」
かたやニッとワルそうに口角を上げ、かたや真面目な顔で微笑んだ。そんな正反対のトランプ兵に囲まれ、まだ文句を言い足りなさそうなグリムを連れて、今日も学び舎へ通う。
「…お願いしようかしら?」
エースのノリに合わせて、どこぞのお姫様のように少し生意気な態度を装った。二人のナイトは喜んで、うやうやしく屈んでみせる。
「「お手をどうぞ、プリンセス」」
二人の手を取って踏み出した一歩は新鮮で、お姫様のような扱いに少しだけドキドキした。だけど、すぐにそんな自分達の芝居がおかしくなって、 誰からともなく吹き出して笑い始める。平和で幸せな光景だった。