第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「てか、久しぶりにそんな興奮してるジェイド見た♡」
「ええ……。少し冷まさないと」
ジェイドは、バクバクと破裂しそうな心臓をぎゅっと掴む。
ユウさんが、かわいすぎる!!
小さい彼女が唇を噛み、小魚のように震えた表情がなんとも可愛らしくて堪らない。あの表情を見ていると、ついつい加虐心をそそられイジワルをしたくなってしまう。
ああ、食べてしまいたいほど…可愛いらしい。
熱くなる吐息をハァーと吐く。
今すぐ冷蔵庫に入って頭を冷ましたかった。
……今はまだダメだ。
彼女からの信頼を勝ち取り、
自ら僕を求めるてくるようになるまで…。
シナリオを演じきらなければ。
「ジェイド~。
『策士策に溺れる』っていう言葉知ってるぅ?」
「フフ…。そうならないように、フロイドが見張ってくれてるんじゃないんですか?」
「んなワケねーじゃん。ジェイドがポンコツになると、アズールがうるせーから今回だけ仕方なくだよ。勘違いすんな」
「おやおや。優しい兄弟を持てて、僕は幸せ者ですね」
「うぜ」
八つ当たりのように、そこら辺にいた雑魚を絞めた。フロイドの魔法は絶好調だった。全寮の恋愛協定が破られてからと言うもの、我先にとユウを狙い、オンボロ寮に雑魚共が懲りずに何匹も押し寄せる。
それを想定した上で、人知れず双子はオンボロ寮に続く道を守護していた。方法はどうであれ、強い雄として特別なあの子を守ってあげたいのだ。(言ったら嫌われるから、言わないケド)
フロイドが先鋒を切る。
ハットを片手で深く抑え、もう片方で魔法をぶっ放す。ニヤリとエナメルの歯を見せると、可愛いクマのぬいぐるみは火だるまだ。ついでに送り主も。
バッサバッサと薙ぎ払い、段々と調子づいてきたフロイドは『Ooh! Let's go!(さぁ、行くぜ!)』とシャウトし、リズムに乗って歌い始めた。曲名が『another one bites the dust(地獄への道連れ)』だと気づいた小魚は全身が震え上がる。