• テキストサイズ

【ツイステ】監督生はプリンセス(長編)

第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上



普段であれば、玄関まで迎えに来たジェイド先輩と登校するのが常だったが、男は言いたい事を言って満足したのか笑顔で帰って行った。

「……なんだったんだ」
「……なんだったんだゾ」

少女と猫は一気に脱力した。

朝から要らぬ疲れがどっと出た。
ハァーと息を吐いて、へなへなとソファに倒れる。続いてグリムがコテンとその上に伸びた。

だがキャパオーバーの私には、丁度良かったのかもしれない。先輩の色気に思わず心臓が止まりそうな程ドキドキしたなんて、末代までの恥だ。

「……くぅ」

思い出すだけで、身体が燃え上がりそう。
ジェイド先輩の大きな腕に包まれた感触。汗とシトラスの香りがシナプスを焼き、脳内にフラッシュバックしてくる。あまりの衝撃にユウは、火照る顔を手で隠してしばらく羞恥に悶えた。


(えっちだ…!)


「なぁ、ユウ。
あいつ、ときどき息してなかったんだゾ。
あのまま窒息したんじゃねーか?」

「え…?」

どういうこっちゃ。



ーオンボロ寮 外庭

「エー。本日はお日柄も良く、カワイ子ちゃんの為にオアツマリ頂きありがとぅございまぁす。

てことで、雑魚は散れ」


その場にいた烏合の衆は、全てフロイドの手によって地に倒れていた。飛び散る花束や包装されたプレゼント達は皆無残にも、黒焦げになっている。巨悪の根源であるフロイドは、地面とキスしている馬鹿デカイ獣人の一人を椅子にして、ミントキャンディをガリガリと噛んでいた。

そこに瓜二つの顔をしたジェイドが歩み寄る。
二人はいつも通りの表情を浮かべるが、周囲に飛び散るバイオレンスな光景は日常的な平穏から逸脱し、とても倒錯的だ。二人だけはまるで切り離された世界にいるように、気にもとめていなかった。

「じょーずに求愛できたー?」

ダルそうに肩に手を回しながら、フロイドが尋ねる。
ジェイドは興奮する気分を抑えるように、フロイドが椅子にしていた獣人の頭を蹴った。

「ガ゛ッ…!」

意識が朦朧した状態が、完全に落ちた。
口から飛び出た血がフロイドのお気に入りの靴に、ピチャっと跳ねる。

「うわ、サイアク~」

汚れを拭うように間をおいてフロイドが止めを刺す。血に酔った肉食魚は舌なめずりをして、対して美味くもなさそうな塊を見下ろした。そして、普段では滅多にお目にかかれない片割れに視線を移す。

/ 209ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp