第17章 Broken(抜け駆けナシ・恋愛協定は破られた)上
「Rome wasn’t built in a day.
(ローマは一日にして成らず)
これまで秘密裏に寮を超えて長く築き上げてきた、オンボロ寮の監督生に関しての恋愛協定がついに破られた。男子校に一人通ううら若き乙女に対して、悪名高いNRCと言えども
紳士的に振る舞うべく、互いを監視し合ってきた友情も今日で終わりだ。
ハーツラビュルであれば、ルール違反は問答無用で打ち首。だが、この件に関しては各寮長たちの意見を聞きたい」
「……………てか、ダッル。
恋愛くらい好きにさせればいーじゃん。小エビちゃんだって立派な女の子なんだから」
「フロイド!!!何しにここにきた?!
部外者は出ていけ!」
今度は反対外にいたデュースが、ダンダンッと木槌を打ち付ける。心なしか音がエースの時より暴力的だ。
「フロイド、静かに」
「んげ゛ヴァッ!!シ゛ぬ゛…」
つかさず背後からジェイドがフロイドの首にチョークスリーパーをかけた。目がガンギマりである。
遠のく意識の中、フロイドは確かに見た。
あの怠惰なトドも、ベタも、人嫌いなホタルイカも、兄弟でさえ……目がガチだ。やべぇ。
泡を吹くフロイドを見て、きゃっきゃと機嫌が良くなったリドルだったが数秒で我に返り、咳をして誤魔化した。
「ゴ、ゴホン。…まず、戦犯 エペル・フェルミエが在籍するポムフィオーレ寮長 ヴィル・シェーンハイト先輩。申し開きがあれば聞きましょう」
「この件に関して全面的にアタシの非を認めるわ。まさか副寮長のルークに裏切られるなんてね…。返す言葉もない」
「ウィ…すまない毒の君。私は愛の奴隷なんだ」
「ネージュの件で懲りたと思えば、まさか二度も裏切られるなんて。…あの子は渡さないわよ」
「ああ、ヴィル。愛と嫉妬が歪に剝きだした君も実に美しい!トレビアンッ!滅多に見せないジェラシーな表情はなんて甘美なんだ!」
珍しく内輪揉めしているポムフィオーレ上層部を眺め、唯一一年生で参加しているトランプ兵がコソコソと耳打ちする。