第16章 Hecate's tears(ヘカテーの涙)
「私も、ツノたろうのこと大好きだよ…!」
「友として」親愛に答えなければ…と、ユウは頑張ってマレウスの頬にキスを返した。正確には狙いがそれて顎周辺になってしまったが…。
しかも慣れないことをしたせいか、マレウスの首に回していた腕に力が入りすぎてしまい(ヒッ!国際問題発生でござる)グギッと嫌な音がした。
ちゅぅっとリップ音が小さく音を立てる。
目が点になるマレウスだったが、目に入れても痛くない程かわゆい人の子から頬にお返しのキスをされたことを理解して、頭上に光と花が舞い上がった。ピピピ…と夜中にも関わらず小鳥がツノに止まる。(祝福あれ!)
こうして二人の親愛はより深まった次第だが、
オンボロ寮の入り口から突進してくる小さな影があった。
「こぶうんんんんッッ゛゛ーーーー!!!!」
グリムであった。
見事なジャンピングスキルでユウのお腹にテクニカルヒットを決めた愛猫は、涙を鼻水を惜しみなく服につけてふがふが泣いていた。
「心配し゛だんだゾッ!!目が覚めたら子分がいなくなってたから!!な゛ん゛かあ゛った゛の゛か゛って!!」
「ああ…、ごめんねグリム。そんなに泣かないで…」
撫でた背中はひんやりと冷たかった。
普段生意気で自分勝手な子なのに、こうして寒い中走り回って探してくれていたのかと、うるりと来てしまう。ごめんねと何回も謝りながら温めるように抱きしめた。
「愛することを恐れてはいけない」と言われた言葉は、こういうことなのかな…と自分の中で反省した。
ツノたろうにお礼を伝え、グリムと共にオンボロ寮に入る。
これからは少しでも、友人達と正面から向き合おう。
そう決意して長い夜に、ようやくピリオドを打つことが出来た。