第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
「…その”いつもの事”が問題なんだ。
ダチのことを馬鹿にされて、笑って聞き流すほど
僕は人間できていない。
たまには、ああいう輩にヤキ入れないと
相手も調子に乗るしな…。
それに…
僕があんな奴に負けるわけないだろ。
さあ、授業に遅れる。急ごう」
そう言ってユウの頭をぽんぽんと軽くなでると、何事もなかったかのように歩き始めた。
二人と一匹だけは、ぽつん…と
意識がなかなか戻ってこない。
「…やだ。デュースクンにトキめいちゃった。」
「オレ様も」
「私も」
「お前はダメだろ!」「いたッ!なんでよーもー!」とふざけ合うことで、ユウ達はやっと歩き出すことが出来た。
この時ばかりは、デュースがかっこいいお兄ちゃんで、エースはいじわるなお兄ちゃんのように見えたのは私の中だけの秘密だ。
◆
放課後に近づくにつれ、バケツをひっくり返したような大雨が降ってきた。風も強い。
突如として雲行きが悪くなり、外で活動する運動部は次々と休みになった。
指定された運動場は雨でグランドが、べちゃべちゃだ。本当にこの場所で勝負などするのだろうか。
意図せず当事者になってしまったユウは、肩にグリムを乗っけながらアップをしているデュースを見る。
エースも「これでなんかあったら、寝覚めが悪ィしー」と言って部活をサボって、一緒に観戦する気満々だ。
全くもって素直じゃなくて、可愛い。
そして今回の騒動を聞きつけ、同じ陸上部のジャックや部活が休みになって暇をしていたエペルもデュースを応援する為に来てくれていた。
「エペル、ジャック。寒くない?」
「心配してくれて、ありがとう。
ユウサンこそ、
女の子なんだから体冷やさないようにね」
「ふふっ…。ありがとうエペル。
ジャックがしっぽであっためてくれてるから
大丈夫よ」
獣人族は雌を尊重する一族らしく、
その中でも何かと気を使ってくれるジャックは
寒くないように腰にしっぽを巻き付けてくれていた。
「グルル…。俺はこの勝負が気に入らねェ。
選抜の席だって、俺とデュースは自分達の実力で
真っ向から競い合って勝ち取ったんだ。
…今さら、落ちた奴の
言いがかりなんざ聞いてられねェよ」