第4章 True friend(マブダチといつもの日常)
「よーするに、
試合に出れなかった逆恨みってこと?
そんなんで絡んでくるなんて、だっりぃ~。
こんなん相手にしないで、行こうぜ」
そう言ってユウの手を掴んでひっぱるエース。
「デュース!」と声をかけ、授業に遅れないように足を進めようとした。正直、魔法士養成学校に魔力がないというだけで自分のことを目の敵にする生徒なんて山のようにいるのだ。
一つ一つ相手になんかしてられない。
ただし、この男だけは動かなかった。
「まだだ」
「…ヒェッ」
自分から喧嘩を仕掛けたと思えない程、情けない声を上げる先輩。デュースが声をかけなければ、逃げ出していたのかもしれない。
「きちんと、ユウに謝ってください」
バキバキと腕を鳴らしながら、言うセリフじゃないよ。
優等生の口ぶりに戻ったがいいが、
どこか言葉の端々に殺意が混じっている。
「相手にしても仕方ないから行こう」とグリムを下ろしてデュースの手を引こうとした瞬間、諦めの悪い声が響いた。
「い、イヤだねッッッ!!
僕はぜったいにその女には謝らない!
謝ってほしかったら、僕と勝負しろ。
スペード!」
「ア゛?!」
「っ…、サシで勝負だ!放課後、運動場に来い。
僕に勝つこと出来たら、彼女に謝罪してやる。
だが、お前が負けたら陸上部を退部しろっ!」
「はー?!そんな無茶苦茶な…!」
「…わかった。」
「ちょ、ちょっと!デュース、何考えてるの…?
そんなのダメだよ!」
ユウがデュースの腕にしがみついて必死に止めようとする。明らかに交渉条件が不平等だ。
だが、デュースはずっと先輩を睨みつけていた。
「男に二言はないからなァッ!
放課後だ、逃げるなよ!」
そう言い残して、
脱兎のごとく元凶は走り去った。
さすがにエースもグリムも
口を開いたまま唖然としてしまう。
「デュース!なんであんな勝負を受けたの?
酷いこと言われるのなんて
いつもの事じゃん!」
耐え切れずユウが声を上げると、
やっとデュースの目が見つめ返してくれた。
その表情は先ほどまでの憤怒とは打って変わって、優しい目をして笑っていた。ユウは驚きで目を見開く。