第16章 Hecate's tears(ヘカテーの涙)
なんと不誠実だろうか。
築き上げてきた信頼も、友情も次の瞬間に捨ててなかったことにしようとしているなんて。
残虐非道なオクタヴィネルに、お前らの血は何色かと何度も思ったが、本当に血が通っていないのは自分自身だった。
ユウは正直打ちのめされていた。
親友に異性として告白され、その気持ちに答えることもできず、でも彼を失いたくないという自分勝手な欲望に辟易した。だが、気持ちもないのにエペルを欺くような事もしたくない。
堂々巡りだ。
「本当に小さな脳味噌ですね…」とどこぞの意地悪な人魚の声が聞こえる。(うるさい!)
「もう限界っ!」
悲しみはいつしか怒りとなり、怒りは超進化して苛立ちへと変わった。普段滅多に負の感情に支配されることないユウは、この日だけはベットから飛び上がり頭を冷やす為にオンボロ寮の外へと走った。
ー古びた時計が深夜12時の刻を報せる。