第15章 In the name of love(オクタの恋愛相談室)
「……。それで?
お前は身を引いてあの二人の幸せとやらを願うんですか?
ハッ。らしくもない。
…対価を支払えば、
僕が助けになってあげてもいいですよ」
アズールの悪魔の囁きにも、フロイドは全く動じなかった。
「なんでオレが身を引くの?
おかしなアズール」
「…ハア?お前、ユウさんの事が好きじゃないのか?」
「なにそれ、ちょーうけんね。
オレ別にジェイドと殺し合ってまで、小エビちゃんのこと番にしようなんて思ってねぇよ」
鼻歌でも歌い出しそうなくらい機嫌がいい。
アズールは逆に気味が悪くなった。
「小エビちゃんはさ、
ビクビクしてちんまくてすぐ死にそうなのに。
弱くて柔くてすぐ握りつぶしちゃいそうなのにさ。
目が合うと、フヘってまぬけな顔して「フロイド先輩」って笑うんだぁ。その顔が可愛くてスキ。あと、犬みてーに寄ってきてしっぽ振ってるんの。小エビなのに。
でもキッチンでオレの手伝いしてくれる時は、本物のエビみたいに身の回りの世話してくれるんだぁ。本当可愛いよねぇ。
オレは小さくて可愛い小エビちゃんが幸せそうに笑ってれば、それでいいやってかんじ」
「フロイドッ!…あなた!」
(いつの間に大人になって……!)
芽生えた母性が弾けそうで思わず口を抑えた。
極太ボードマーカーで「愛」という文字が書かれる。
あれれ?常時イカレ・ジェイドなんかよりも、フロイド・いかれぽんちの方を思わず応援したくなってきたぞ。
「…その代わり、泣かせたらジェイドでも容赦しねぇ」
ああ、前言撤回…。イカれた双子、しかも両方から好かれるなんて可哀そうなユウさん。この先の人生を平穏無事に暮らしたいのなら、今すぐ死ぬ気で逃げることをお勧めしますよ。
しかし彼女の勤勉な働きぶりに、フロイドを手玉に取る胆力。そして謎に広い人脈のパイプッ!ユウさんを通じてヴィルやマレウスと繋がることが出来れば、よりモストロ・ラウンジへの収益を上がることができる!
マ、他人の恋路に首を突っ込む程愚か者ではないが、失うには惜しい人材だ。
いやでもジェイド一人だけがリア充なんて、耐えられない…クソ、…鋭利な角に足の小指ぶつけて苦しみますように……。
アズール・アーシェングロット(17歳・童貞)の心の中では、珍しく利欲と欲望が葛藤していた。