第15章 In the name of love(オクタの恋愛相談室)
(オレも小エビちゃんに恋してるってこと?)
「………、…イド、フロイド!」
ハッと意識が戻ると、目の前には眉間に皺を寄せたアズールがいた。
「お前も大丈夫なのか?」
「…何が?」
「ユウさん」
「……っ」
「………ハァー。
彼女はなんでいつも台風の目のように、厄介ごとの中心にいるんだ。捻くれ者に好かれる才能でもあるのか」
ウンザリしたようなアズールの脳内では、薔薇の優等生や美の追求者やら憂愁の獣の姿が次々に浮かんでは消えた。
アズールの中では、ジェイドに限らずフロイドもユウに対して人一倍甘い態度を取っていると記憶している。なにせ彼女は、情緒不安定なこの気分屋ウツボの手綱を握り、キッチンの料理評価SSS(トリプルエス)を二週間連続で叩き出すという過去最強の偉業をやり遂げたんだから。
実際に調理したのはフロイドとは言え、ユウの他者の能力を引き出すのは力はピカイチだ。それこそ大魔法士ディア・クロウリーから”猛獣使い”と評された名は伊達ではなかった。
あのフロイドが気分以外で「守ってあげる」と言わせたユウの素質。
単に可愛い雌への庇護欲もあるとは思うがー
『他人から能力を奪わなくても、あなたは十分凄いです』
アズール自身も味わった。
『努力は、魔法よりも習得が難しいんですよ』
まるで深海に差し込む月光のような温かさ。
(そういう所ですよ。あなたの、慈悲深さは…)
闇を秘める生き物にとって、一筋の光は眩しすぎる。
眩しくて、眩しくて、相反する存在なのに…
求めずにはいられない。
一度、その温もりを知ってしまえば
後戻りなんてできない。
身を滅ぼしてしまいそうな程、闇は光を求め続ける。
なのに、その光を手に入れる席は一つだけ。
選ばれなかった魂は有象無象の塊になって
廃棄物のように腐り落ちていく。
心から貴女を愛してるのに。
(……なんて残酷なんだ)
◆
「小エビちゃんってやっぱスゲェー!
オレ生まれた時からジェイドと一緒にいるけど、ジェイドのあんな顔初めてみたかも」
「そりゃおまえ、逆に兄弟のそんな顔見たくないだろ」
「そお?オレは面白かったけど。
つまんねぇーそこいらの雌が相手なら
ちょっと幻滅。相手が小エビちゃんって聞いて流石じゃんって思った!」