第15章 In the name of love(オクタの恋愛相談室)
互いに想い合っていればこれ以上ない程幸福になれる一方で、愛を返すことが出来なくなった人魚のパートナーの未来は暗い。血生臭い事件に発展することも少なくはないのだ。
聖戦時代では、老若男女、性差を問わず恋をすれば海に引きずり込む人魚達を恐れ、メディアでは連日シー・モンスターと揶揄った表現で異種族間の婚姻に警鐘を鳴らした。
人魚のアズールからしてみれば、とっかえひっかえ相手を変え、安っぽい愛を誓う陸の生き物こそ、浅ましいモンスターだと皮肉を言ってやりたくなるが。
ー陸と海
交わることのない二つの世界。
只でさえ人魚と人間の恋は障害が多いのに、よりにもよって惚れた相手が異世界出身のユウだなんて。本当に見る目がありますねと自身の腹心に墨を吐き出したくなった。
「あ〜あ。オレも小エビちゃん狙ってたのに」
「ギイイィッッッ!!」
「めっちゃ威嚇するじゃん。ティーンの恋かよ」
「ティーンです。…フロイドでも許しませんよ」
「はいはい」
「ああ、こうしてはいられない!ユウさんを僕だけのものにする為に入念な計画を練らないと…。この想いを受け入れてもらうためにも一日でも早く通わなければ…」
「ああ、そういえば面白い話を聞きました」
頬を染めて恋する乙女が如く浮かれているジェイドに、アズールが悪魔の微笑みを向ける。これもここまで苦労されられた分と、男子校なのに一人だけ幸せになれると思ってんなよという恨みが込められていた。
「ユウさんの学友ポムフィオーレ寮一年生
エペル・フェルミエさんが彼女に交際してほしいと、告白されたそうですよ」
ヒュッと喉が凍り、ジェイドの頬はみるみる血の気が失せていく。
「いったい、いつ…?」
「本日ラウンジにいらっしゃる前に。
いやはや、下世話な生徒のせいで掃除が大変でしたよ。その後どうなったかまでは伺ってませんが…」
アズールが話している途中で、物凄い速さで海流がビュンとうねる。慌てて目をぱちくり動かすと、目の前のジェイドの姿が消えていた。
「えっ、あ、どこにいったジェイド・リーチ!」