第15章 In the name of love(オクタの恋愛相談室)
「鯉?」 「故意?」
「馬鹿か?!馬鹿なのか?!
likeじゃなくて、loveのほうですよ!」
コイ…こい…恋…ラブ。
ラブってあの、あのラブ?(笑)
真実の愛とか運命とか馬鹿らし、あほらしと散々コケにしてきたあれ?
おとぎ話なんて頭がお花畑な奴らの話ですよ。
あー笑える。と散々おちょくってきたあれ?
脳内を一瞬で過去の自分達の愚行が駆け巡る。
だが、その身に体験してきた分フロイドよりもジェイドの方がその言葉をすんなり受け止めることが出来た。
「僕は、……ユウさんに恋をした?」
ようやく不治の病に名前がついた。
◆
「よりにもよって恋愛ドベのアズールに気づかされるとは…。ああ、まさか僕が恋をする日が来るなんて!これも慈悲深い海の魔女のおかげです。感謝しますアズール」
「お前、今言ったこと一生忘れないからな」
「ああフロイド!なんていい気分なんでしょう!今ならハグしながらキスしてあげたい気分です」
「うげぇッやめろって!!
マ、元気になってよかったねジェイドォ。
元気になりすぎて、うぜぇけど…」
「世界がこんなに輝いて見えるなんて!これも全て恋の力…。恋なんて脳味噌お花畑な下等な種族がするものとばかり思っていましたが、彼女がいるだけで世界が輝くなんて、なんてすごい魔法なんでしょうか。魔法使えないなんて噓ですよね、彼女。本当に可愛らしい人…。ああ、思い出したら会いたくなってしまいます…ユウさん」
「脳ミソハイターにつけとけ」
「ねぇ、オレ帰っていい?」
人魚は恋に一途な生き物だ。
様々な種族が共生するワンダーランドでは、長寿で強い種族ほど生殖機能が衰退している。
ヴァンパイアがいい例である。彼らは不老不死でワンダーランド最古の種族と呼ばれるが、自分達で繁殖することは出来ない。故に彼らは血を分け与え自らの眷属にしたり、人間の子供を攫って自分達の子として育てたりする。
人魚も力や魔力は膨大なれど、個体は多種族に比べて圧倒的少ない。死が渦巻く過酷な海の世界が要因でもあるが、一番大きな理由は生涯伴侶に決めた唯一人だけを愛し続けるからだ。ゆえに、人間と人魚の結婚は“魂の交換”とも言われる。
異種族間の結婚も珍しくなくなった現在のワンダーランドでも、人魚との恋は”災厄か祝福か”のどちらかだとある博士は提言した。