第15章 In the name of love(オクタの恋愛相談室)
『……フロイド?』
指を軽くパチンッと鳴らす。
『ご指名ありがとうございまァ~す。
ドクター・フロイドでぇす』
陽気なフロイドの声に幾分機嫌が良くなったのか、先ほど深海に叩きつけていた尾びれがクイクイとこっちへ来いと岩陰に呼んだ。
『偶にはオニーチャンしてあげる』
シンメトリーな自分の片割れの姿にようやく安心したのか、ジェイドはやっとまともに呼吸が出来た。
『ふんふん、あ~はいはい』
『マジでッ!ア゛~~~~そう』
『少々お待ちくださぁい』となにやら岩陰からフロイドの声だけが聞こえる。
なんだこの三文芝居は……。
アズールは腕を組み、眉間に皺を寄せてその一部始終を見ていた。時計の針が刻むように、イライラとした苛立ちを隠す気がない。
ジェイドと話し終えたフロイドが顔を真っ青にして、アズールの元まで泳いできた。なんだやはり只事ではなかったのか?と一瞬申し訳なさが顔を出し真剣に話だけでも聞いてやろうと耳を傾ける。
「アズールどうしよう…」
「一体ジェイドの身に何があったんです。詳しく説明しなさい」
「うん…」
一部始終を聞いて、思わず「はあ?」と締まりのない声を出す。その驚くべき内容に、こいつら情緒をエレメンタリースクールに置き忘れてきたのか…と内心白目になりながらアズールは蛸壺に帰りたくなった。
もう色々とメンドクサイので、アズールは直接岩陰からジェイドに語り掛ける。
「それで……
ユウさんを見えるとキラキラと輝く幻覚が見え、まともに肺呼吸ができないと?」
「……はい」
「四六時中ユウさんのことで頭がいっぱいになる。話しかけたくてオンボロ寮に行くのに嫌われたくなくて、帰ってくる。これを毎日繰り返し行っていると?」
「……恥ずかしながら、そうです」
「しかもユウさんの周りの雄、…失礼。友人をなぶり殺したくなったり、最近ではいつも一緒にいるグリムさんを無意識に威嚇してしまうと?」
「………仰る通り」
「病気ですね」
「そんな!ジェイド死なないで」
「ああ、フロイド。短い人生でした」
「ジェイドー!!」
「だぁから、そのつまらない三文芝居はやめなさいと言ってるでしょうがッ!!
誰がどう見ても明らかに、恋でしょ。コ イ!」
ポカンと口を開けるポンコツ・リーチ兄弟。