第14章 Crimson apple(真っ赤な林檎はいかが?)
そこで気づく自分の気持ち。
アップルパイを一緒に作って
笑いあったユウとの時間。
真っ白な雪の中に一滴の血が零れたような
薔薇の頬。
一年生で泊まった時に寝ぼけて抱き着かれた時の
小さくて華奢な体。
何よりどんな話し方をしても、
どんな自分を見せても
受け入れて包み込んでくれるユウの優しさ。
エペルはユウが「好き」だと思った。
ーそして誰にも渡したくないとも。
いつも一緒にいるエーデュースや理想の体つきのジャック、意外性があるセベクなら身を引いたかもしれない。
共に過ごす仲間ならば、誰よりもユウを大事にしてくれると認められたから。
だが違う奴なら話は別だ。
例え、ヴィル先輩でも
自分の好きになった女(ヒト)を黙って渡すと思うな。
一度アクセルを踏めば止まらない暴走列車の如く、エペルはルークにお願いしすぐに特攻をかけたのだった。
「ユウサンッ!」
「ア、ハイ」
「わーは…、僕は、
これまで、ユウサンに情けない姿をいっぱい見せてきた…よね。植物園で倒れた時もVDCで思うようにいかなかったときも…。
でも…周りがどれでけ笑っても、
かっこ悪い僕のこと…
ユウサンだけは笑わなかった。
魔法も使えないのに、いつも危険な場面に立ち向かっていって、男子校だけどNRCの誰よりも勇敢で格好良いって思ってるよ。
僕もユウサンみたいに
強い男になりたいって。
…でも今は違うんだ。
ユウサンを傷つけるもの
すべてから守れる男になりたい。
友達じゃなくて男として…。
ユウサンが大好き」
人より牛の方が多い。同世代の子供もいない。
エペルの生まれて初めての恋だった。
「「………!!」」
これにはヴィルも鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をする。
いつの間にかはモストロ・ラウンジに行く生徒達が見世物としてぐるりと囲んでその様子を見ていた。「ヒューッ!」と口笛を鳴らす奴もいるし、少女のような見た目の二人が手を握り合っている姿に「オレ、違う方向に目覚めそうだわ」とデリカシーのないことを言う奴もいた。
周囲からの視線に困惑するユウだったが、
エペルの瞳は真剣だ。
どうしよう…と内心この状況に汗が出る。