第14章 Crimson apple(真っ赤な林檎はいかが?)
”Hey honey, I’ll get it.”
(アタシにごちそうさせて)
彼特有のクスっとした笑い方が
画面から聞こえてきた気がした。
ユウを不安をさせない
スマートな誘いは、さすがだ。
"I’ll pick you up at 7."
(7時に迎えに行くわ)
彼女がわかったと返事をするとちょっと強引なリードだったが、思わず胸がキュンとした。
可愛い私服なんかもちろん持ってるワケないので、場所がモストロ・ラウンジで良かったかも。
あ、今の台詞を支配人のアズール先輩に聞かれたら、怒り狂ったタコ足に殴られそう。
そう思いながら鏡に向き合い、
身だしなみをチェックする。
なんてったって、
あのヴィル先輩に会うのだ。
つむじから足のつま先まで
美という名のチェックが入るに違いない。
オンボロ時計が5時過ぎに差しているのを見て、ユウは急いで身だしなみを整え始めた。
「グリムー!7時にヴィル先輩が迎えに来てくれるみたい。
モストロ・ラウンジで美味しい料理食べれるよ!
お出かけだから、ちゃんと綺麗にしてね」
「……めんどくせぇーんだゾ。飯だけ食べるのになんでいちいち身だしなみなんて気にしなきゃいけねーんだ」
「まあまあ、そう言わずに。
可愛いリボンつけてオシャレした方が、
ごはんも美味しく感じるよ」
「そういうもんか…?
ムムム…
どうせならカッコイイリボンがいいんだゾ!」
鏡の前でくるくると毛を整え始めた可愛いグリムをずっと見ていたいけど、ユウは軽くシャワーをする為にバスルームへと向かった。