第12章 Master(先生はジェイド先輩)
「ユウさん……。その……。
キノコゾウスイ、頂いてもよろしいですか?」
ぷるぷるとキノコをさす指が震え、心なしかジェイド先輩の背後にキラキラとした物が見える。
本当にキノコが好きなのね。
「はあい。熱いので気を付けてくださいね」
「ありがとうございます。陸にはこんなキノコ料理があるなんて…なんて奥が深い。これだからやめられない…」
意気揚々とレンゲを手に取って、
ジェイドが口に含んだ瞬間…
「あっついです!!!」
いつかの花嫁ゴーストの再来かのように、
ガタッと肩を震わせて叫んだ。
キッチンから部屋に来るまでに十分冷めたと思ったんだけど…人魚の舌にはまだまだ熱かったのかもしれない。
「先輩っ!ごめんなさい!
人魚の舌(?)に合わない料理を作ってしまって…。
とりあえず水!水飲んで下さい」
大急ぎでコップを渡すと、珍しく焦った様子で
水を飲むジェイドが落ち着くまで見守った。
「……大変失礼しました。僕としたことが。
異国のキノコ料理と聞いて、心が躍ってしまい…
陸の料理に舌を焼かれるなんて……。
ユウさんの手料理なんですから、
冷めたら必ずいただきます。
ああ、早く食べたい…………。」
口をナプキンで拭き、恥ずかしさに縮こまっているかのように見えるが、ナプキンの下から舌ナメずりする姿がばっちり視界に入った。
ごちそうを前に待てをしている猛獣のようで…
ついには、お腹もぎゅるるぅ~と鳴る始末。
ユウは一休さんのように、一瞬思案した後、
先ほどジェイドが食べたレンゲを持った。
「ユウさん?…なにを?」
彼が目を丸くながら、ユウを見るが
彼女は構わず「ふーふー」とレンゲに息を吐いた。
「これは私が子供の頃、
兄がやってくれたおまじないです。
これをやればどんなに熱いスープでも
すぐ冷めて、美味しく食べられるんですよ!
先輩には人より少し時間をかけて
冷まさないとですね…」
そういってユウは同じ動作を続ける。