第12章 Master(先生はジェイド先輩)
しばらくして、クスクスと意地悪そうに笑うジェイド先輩を見て、またやられた…!と顔を憤るも、いつものように憎まれ口を叩く彼を見て、少し安心した。
半袖の寝着を着せて、ぽつりぽつりと会話をしながら、額の汗をぬぐい、飲みやすいにコップで水を渡していく。
すると…
「とても……気持ちいいです」
「?…わたしの手がそんなにいいですか?」
「はい……心地いい」
ジェイドはユウの手を握って、自分の頬に触れさせた。自分と比べて稚魚のようにちいさい手。
触れるとなぜか、とても安心した。
目をつむりながらそのまま眠るジェイドの寝顔を見て、
ユウは来て良かったなと思った。
顔色もだいぶ落ち着いたし、
熱も下がってきているようだ。
(少しでも……先輩に恩返しできたかな?)
なごやかで静かな空間が二人を包み込む中…
突然グウーと鳥の喉が潰れたような爆音が
部屋に鳴り響いた。
「!?……あの」
「………」
「ジェイド先輩…お腹すきました?」
「…………………すきました」
ぽっと眠っていた彼の頬が違う意味で
真っ赤に染まった。
照れるようなその表情を見たユウは、
思わず、“可愛らしい人”とジェイドに対して初めて思うのだった。
「ふふっ。良かったら何か作ってきますね。
モストロ・ラウンジに行けば
キッチンぐらいは貸してくれると思うので…」
身体を起こして、立ち上がろうとするユウを
離さないよう掴まれた。
心なしか「キュウ」とイルカが鳴くような声が聞こえた。
「…?」
「……………いやです。ここにいてください」
「えっと……すぐ戻ってきますから」
「ダメです。僕以外の所に行かないでください」
(わぁ…!)
普段のジェイド先輩からは想像もできない甘えっぷり。
絶対いつもの先輩には言えないけど、
今日のジェイド先輩は大変可愛らしい。
……いつもこうならいいのに。
ユウの腕を離さないぞとばかり、
ギリギリと強く掴まれそろそろ痺れてきた。
「ジェイド先輩のために、
美味しいものを作って必ず帰ってきますから」