第12章 Master(先生はジェイド先輩)
(無理無理!…私がジェイド先輩の服脱がすの?!
捕まるっ保護者から絞められる!)
そんな姿を想像するだけで顔が真っ青になる。
頭をフルフルと左右に振って、必死に思考を回した。
そうだ…!フロイド先輩を呼べば!あ、人魚の人はダメなんだっけ。じゃあ、なんとかマブに頼んで…。
ユウの百面相は、
突如逃げる体をガシっと掴まれて終わった。
掴んだ犯人はこの部屋に一人しかいないのだが…まさかと顔を上げと、
「ユウさん…。僕の服、脱がせてください…」
(ええぇぇっーー!)
切なく吐かれる吐息が、色っぽいんですけど!?
ユウは脳内で逆切れしながら、叫びそうになる口を両手で必死に抑えた。
「いや、でも先輩。今違う人呼んでくるので…
ちょっと待ってもらってもいいですか?」
「…ハァ、汗が染みついて…
気持ちが悪いんです。
お願いします。…ユウさん…」
「ひぇっ!ええ、と。その私にも出来ることと、出来ないことがありまして…」
「…キュゥゥークルル。
あつくて干からびてしまいそうです。
しくしく…」
「ううっ!…」
普段強気でスマートな先輩が
こんな弱った姿で助けを求めてくるなんて。
しかもか弱そうに動物の鳴き声なんて聞いちゃ、
動物大好きなユウからしたら限界だった。
「わ、わかりました!…上だけでなら」
「十分です…。ありがとうございます」
覚悟を決めて、ベットに寝そべるジェイドの
身体に触れるユウ。
Tシャツを裾を少しずつまくり、
万歳をする要領で取るつもりだ。
確かに汗をかいて濡れたTシャツは着ていて、いい気分ではなかったかもしれない。
LLサイズの彼の服をひっぱりながら
ユウも思うのだったが…
人魚故に日を浴びたことのない真っ白で引き締まったジェイドの上半身が目に入り、顔を真っ赤にして目を逸らした。
(これは、看病…。これは、看病!
けしてやましい事ではない…っ)
なぜか自分がいけないコトをしている気分にもなったが、具合が悪い先輩にそんな気持ちを持つのも不謹慎だと自分を諫める。
目を瞑って最後までやり遂げた彼女は…
目を瞑った先で、意地悪な人魚が
嬉しそうに微笑んでいる姿を
残念ながら見ることできなかった。