第12章 Master(先生はジェイド先輩)
そんな片割れの妄言を聞いていると、「ユウさん。僕のことは…?」とどこかソワソワと体を動かしてしまうようになった。
なので、出来るだけ彼女と接点を持ちたいジェイドは権力を使って、よくホールの仕事も手伝うようにさせた。
しかし、ひとたび彼女がホールに出ると
絡まれて、絡まれてしょうがない。
普段御付きのトランプ兵や毛玉がいないことをチャンスと、不良少年たちが名乗りを上げるのであった。
「お嬢さん、落とし物ですよ」
「え?」
「僕との出会い落としましたよ」
「あっ、私のじゃないです」
しかし、彼女はかわすのも上手かった。
ここは自分の出番だと、悪役なのに正義のヒーロー面して登場しようとしたジェイドの足ももつれる。
イチャモンをつけるクレーマーにも…
「おいコラ!お客様は神様じゃねーのか?!」
「ほかの神様のご迷惑になりますので…」
「おい、俺ら神様だって!ヤッタ!」と第三者のモブがパシンっと興奮気味に肩を叩く。
天然なのか頭が弱いのか……。
彼女は見事、そういった客も捌ききった。
◆
そんな日々を繰り返す内に…
「う、ウソ…!信じられないっ!」
テスト用紙を握りしめる腕がワナワナと震える。
グリムも同じようにワナワナと身を震わせ、
叫ばない様に口を前足で押さえている。
様子がおかしい二人に、
マブ二人は「?」でテスト用紙を覗きこんだ。
「「え。え…、えっー100点満点?!!」」
その点数にマブ二人も驚愕する。
肝心のユウはまるで戦場に
出向くように覚悟を決めた顔で、前を向いた。
「私…。
ジェイド先輩のとこ行ってくる!!」
そう言って飛び出して言った。
過ぎ去った彼女の背を見送って
男二人はお互いの肩を突き飛ばし始めた。
「デュースお前…何点」
「エースこそ…」
「平均点70点くらいらしいじゃん~。
で、お前は?」
「そ、そうなのか。
僕は今回調子いいぞ。ユウ程じゃないが…」
「…てか、あいつに負けるの凹むわ」
「ああ…。僕達もジェイド先輩に教えてもらうか」
「絶対無理っしょ。その前に死ぬな」
「ああ死ぬ」
「……オレ様にも教えてほしんだゾ」
ぴゅーっと雄三匹の背中に悲しい風が吹いた。