第1章 誕辰【※冨岡義勇】
実弥に別れを告げて、陽華が家に帰ると、義勇はすでに帰宅していた。
陽華は居間にいた義勇に、ただいまの挨拶をし、そのまま寝室に向かった。
自分の羽織を脱ぎ、壁に掛けると、隣に掛けてあった義勇の羽織が目に入った。
いつも丁寧に扱ってはいるが、ところどころ破れていたり、擦れていたりともうボロボロだ。
(もう長いこと使ってるからなぁ。)
そろそろ修復してあげようかな。そういえば前に繕ってあげようと、鱗滝に頼んで余っていた布を送って貰っていたことを思い出した。
そうしたら唐突に、義勇への誕生日の贈り物が決まった。
(誕生日、これにしよう!)
そう思い、陽華は義勇の元に走り出した。
「義勇っ!」
勢いよく襖を開けて登場した陽華に、居間で刀の手入れをしていた義勇は、驚いた表情で見返した。
「義勇の羽織に、醤油溢しちゃった!染みになっちゃうといけないから、洗濯するのに暫く預かるね!」
「なぜ、寝室の壁に掛けてあった羽織に、醤油が付くんだ。」
率直な質問を投げ掛けたが、陽華はそれを無視した。
「とにかくっ!暫く預かるから、明日は寒かったら違うのを着てってね。」
陽華の迫力に圧され、義勇は頷くしかなかった。