第8章 指南【※竈門炭治郎】
「ほら、特訓にはこれを使え。」
そう言うと天元は、切り込みの入ったこんにゃくを差し出した。炭治郎はそれを受け取ると、真面目な顔で天元を見た。
「えっと…これは、持久力の特訓か何か…ですか?……確かに、長持ちする方法は聞きましたけど、人前で…恥ずかしいな。」
「口吸いのだよっ!!」
唾が飛んできそうな勢いで、天元が突っ込む。
「なんだ。俺てっきり…、そういう意味なのかと…、」
「バカかっ、お前はっ!」
炭治郎の頭を、思いっきり小突いた天元を見ながら、善逸は思った。
(口吸いの練習に、こんにゃく出してきた時点で、もうお前もバカだよ。)
「うじゅいしゃん、こうれすか?」
「違うっ、もっと舌を動かせ!根元からだっ!」
「こう?」
「お前、本当に才能がねぇーなっ!そうじゃねーだろっ!」
天元の怒号が飛び交うこの特訓は、深夜にまで及んだ。善逸は、ただただそれを、呆れた顔で見ていた。
「はぁ…はぁ…。俺、出来そうな気がしますっ!」
「あぁ、最後は良かった。その感覚を忘れないようにしろっ!」
「ありがとうございます!」
他にも、天元は抑えて置きたいポイントなどを惜しげもなく指南し、最後にこういった。
「炭治郎、最後に言っておく。挿入及び射精は、最後にお前に与えられたご褒美だ。それまでお前は、その女に尽くすだけの奴隷だ。精一杯尽くして、最後のご褒美を、自分の力で勝ち取れっ!」
「はいっ!」
大きく頷いた炭治郎の横で、善逸が手を上げた。
「先生、質問ですっ!」
「なんだ、善逸?」
「でも、尽くしてばかりだと、向こうは調子に乗りませんか?」
善逸の質問を、天元が鼻で笑い飛ばした。
「お前は、頭がわりーな。そうやって、自分の手法にメロメロになった女を、自分好みに育てるんだよ!」
「おぉっ、さすがは性の神!!」
今日、初めての天元の言葉に、食い気味に善逸が反応した。しかし、それを炭治郎が嗜める。
「善逸。俺は、こういうのはやはり、相手を慈しむ心が一番大事だと思う。」
「大真面目に、性講座受けてた奴に言われたくねぇーよ。」
思わず、善逸が突っ込んだ。
そうして神講座を終えた炭治郎は、最後にもう一度、大きく礼を言うと、善逸と一緒に宇髄邸を後にした。
空には、綺麗な朝焼けが浮かんでいた。