第1章 誕辰【※冨岡義勇】
「なにこれ?」
急に渡された桃色の布を見て、陽華は首をかしげた。
「リボン。」
まさかの答えに驚き、陽華は目を見開いて、その布を広げて見てみた。
幅はサラシと同じくらいか、長さはそれよりも長かった。だが、サラシと違って滑らかさと光沢があり、何よりも桃色というのが如何わしく感じた。
「なんで、持ってるの?」
「誕生日用。」
「天元さん、お嫁さん達にこんなものを着せてるの!?」
若干引きぎみに陽華が問いかけると、天元は静かに首を降った。
「うんにゃ、俺が着ける。」
「…………………………。」
明らかに侮蔑の籠った表情で見つめられ、天元は慌てて答えた。
「なんだ、その顔は!嫁達には好評なんだぞっ!」
別に人様の夫婦の性癖に口を挟むわけなく、自分のところもそんなに変わらないか?などと考えていたら、一つの疑問が陽華の頭を過った。
「これ、まさか使用済みじゃないよね?」
汚い物を見るような瞳で布を見つめると、天元が怒ったように言った。
「使用済みを渡すわけねーだろっ!それは今年用に新調したやつだ!」
あ、毎年やってるのね。
そんなことが頭を過ったが、陽華はあえて言わずにそれをやり過ごした。その反応に対して、とうとう天元が切れた。
「そんな顔すんなら、もう相談乗ってやんねーからな!それやるから、とっと帰れっ!!」
そう言われて陽華は、如何わしい布と一緒に宇髄家を追い出された。