第1章 誕辰【※冨岡義勇】
ある日の午後、陽華は宇髄邸に訪れていた。
「ねぇ、天元さん。義勇の誕生日の贈り物、何がいいと思う?」
陽華の突然の質問に、天元は眉間に皺を寄せて答えた。
「んなの、俺が知るわけねーだろっ!本人に聞けっ!」
「義勇が答えるわけないでしょ!只でさえ、物欲がなくて、家にだって必要最低限の物しか、置いてないんだからっ!」
陽華は、天元の答えに不服そうな顔をすると、さらに言葉を続けた。
「だから年も近くて、職業も一緒の天元さんに聞きに来たんじゃない!?鬼殺の男子は、何が欲しいの?」
真剣な顔でそう聞いてくる陽華に、天元は思いついたように、ニヤけながら答えた。
「そうだな。この頃の男が欲しいって言ったら、権力、金、女しかねーだろうな?
……おっと、そんな怒った顔してもダメだぞ?これは紛れもない事実だ。」
陽華が何か言う前に、天元が先制して答える。
「冨岡は権力にも金にも、興味はなさそうだな。…本当に地味な男だぜ。
でも、性欲はあるみたいだし、お前にリボンでも巻いて、『私をあげる♡』とか言って、一晩濃厚に尽くしてやるのが、一番いいと俺は思うけどな?」
「の、濃厚に尽くす……。」
一瞬想像して、陽華の顔が真っ赤に染まった。
でも、尤もらしく言われて、なんだか納得しそうになる自分もいる。
そんな陽華に畳み掛けるように天元は、箪笥の引き出しからあるものを取り出し、陽華に手渡した。
「それ、やるよ。」