【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第1章 #1 眠・謎・力
ーーーズズッ…ズズズッーーー
「うるせぇガキがぁ!!!さっさと取り込まれろっ…!」
ヴィランが少年を覆い隠すように全身を広げ包みこむ。
そんな姿に恐怖と吐き気を感じながら、私はヴィランに飛びついた。
「っ!!!なんだ、お前っ…いや、お前も一緒に取り込んでやる!!!!」
突然の獲物の追加に少し驚きつつも、にやりとしたそのヴィランは、飛びついた私の腕と足をいとも簡単に飲み込んでいく。
「うっ…嫌っ、離…離せ!!!」
ーーーズズッ…ーーー
ぬるりとしたその感覚は、取り込まれるごとに力を吸われて失っていくのがわかる。
必死に顔を背けながら、手足をバタつかせもがき、塊のなかの爆豪を探す。
(爆豪…爆豪…!!!!)
突如、感覚が失われつつある私の右手が、何かに触れた。
それは、まぎれもなく、人の腕だった。
瞬間的に右手を伸ばし、その腕を掴んだ。
掴まれたその腕は、びくんっ、と動き、力をこめる。
(生きてる!)
その腕が爆豪本人かどうかなんてことを考える余裕もない。
生きていることが優先だった。
助けたい、その一心で引き寄せる。
すると、私の下半身の感覚がほぼないことに気づいた。
必死に探るあまり、下半身がすべてヴィランに取り込まれてしまっていたのだ。
右手は掴んだまま離さず、左腕をばたつかせてもがく。
下半身の感覚はもうほぼない。
かろうじてそこに「下半身」がある、というだけはわかる。
どうしたら…
そんなことを考えた次の瞬間、顔全体が何かに覆われ、酸素が遮断されたのがわかった。
ついに自分の顔までも飲み込まれてしまった。
「っ…」
(どうしたら…どうしたら…)
焦る心と苦しい気持ちが相まって、意識が遠のいていく…
私…私……
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ーーーボンッ!―ーー
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「ぷはっ!!!!はぁっ…」
「ぐはぁぁぁっ!!!!」
左手の痛みと顔周りの解放感で、薄れた意識がハッキリとし、私の頭は酸素を追い求めるように口を開けた。
その姿はまるで、水中から顔を出した鯉のようだった。
びりびりと痛む左手。
何が起きたかはわからない。
でも、確実に今「穴」が開いたことがわかった。
突然の出来事に苦しむヴィランが、身をよじる。
ぐねぐねとしたその体の中から、つんつん頭が垣間見えた。
衝撃であいた「穴」から、爆豪が顔を出した。
