【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第3章 #3 影・術・夢
一度スマホを耳から離し、それを確認する。
(私のスマホではないな…これ。)
明らかに自分のものではないスマホあてにかかってきたその電話について、はてなマークを思い浮かべながら、もう一度スマホを耳に当てる。
「…という風にした。わかったか?」
「え、あ、なに?」
完全に話を聞き逃した。そしてまた小さなため息が受話器越しで聞こえる。
そんなにため息ついたら幸せが逃げちゃうんじゃないかと思うくらいの、深いものだった。
「…人の話くらい聞け。」
「ごめん。で…なんて?」
「まったく。今朝…」
今朝のこと。
どうやら彼は、私が寝ている間に出勤したらしい。
机の上に一万円札とメモ紙が置かれていた。
ーーー「この番号でタクシーを呼んで、学校に8:15までに来ること。そして登校後は職員室に顔を出し、校長から書類を受け取ってから教室にいくこと。」ーーー
(そんなメモ紙も、そもそも入ってきたことすら気づかないくらいに熟睡してしまっていた。)
「…で、今、何時だと思う。」
「今…え、今?」
ことの経緯を確認したあと、部屋の時計を見ると「12:18」の文字。
盛大な寝坊と遅刻をしてしまったようだった。
どうやら、チャコが私を心配し、お昼休みに職員室にきて連絡をくれたらしい。
申し訳なさで思わず額に手を当てて声を漏らす。
「あちゃぁ…」
そんな私の声を聴いて、また電話越しでため息。
本日、3回目!!
正の字でカウントしてみたくなるくらいの数じゃないか?
「すみません、今から行きます。」
「そうしてくれ。あと、このスマホは祥1が自由に使っていいものだ。校長から昨日受け取った。学校生活にも必要なものなんだろうからな。とりあえず、登校したら職員室まで。以上。」
その一言で通話がプツンッと切れた。
何も聞こえなくなったスマホから耳を離し、壁にかかっている制服を見上げる。
(制服…いつぶりだろう)
まさかこの歳でまた制服を着ることになるなんて…
本当ならかなりイタい人になると思う。
そんなことを思いながらベッドから降りて、洗面所に向かう。
(急がないと…お腹もすいた!!)
私はできる限り急ぎ支度を整えて、指示通りにタクシーを呼んで学校へ向かった。
玄関を出るときに、「カロリーナイト」という商品と水が置いてあったので、それも忘れずにカバンにしまった。
