【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第1章 #1 眠・謎・力
ふわりと上空に舞い上がった少年は、私を抱えたまま横移動を始めた。
爆発をこまめに調整し、近くのビルの屋上へと急ぐ。
振動が先ほどよりも多く、腹部が苦しい…
ぐっ、と言葉を飲み込みつつ、私は少年にしっかりとしがみついた。
すると少年は、ぶっきらぼうな口調で私に向かっていった。
「てめぇがいると足手まといだ!!!あいつは俺がぶっ殺す!!」
”何か”が迫りくるなかで、彼は私という”足かせ”を外す手段を選んだ。
そりゃそうか…防戦一方だもんな。
(いや、でもまって?これじゃぁ…)
私は、少年の邪魔にならにならないようと思ったものの、物語の内容を思い出して口走る。
「だめ!待って…それはだめ!!!」
言葉がうまく出てこない。
焦りからか、ありきたりな”だめ”しか伝えることができず、それはただ少年をイラつかせる。
「あぁ!!?ンだよ!!うるせェ!!!」
(だってそれじゃ…このままじゃ確かあなたは…)
次の言葉を伝える間もなく、少年は近くのビルに飛び乗り、先ほどのキツイいい方とは裏腹に私をゆっくりと地面へおろした。
先程地面の感覚を思い出したばかりのその足は、再び小鹿のようなふらふらなまま。
その足で立つことなく、私は後ろにしりもちをついた。
「痛っ…」
その姿に少年は少し驚いたものの、気配を感じすぐに私から目をそらした。
そして、”ヴィラン”の位置を感じながら、軽く舌打ちをしてすぐにビルから飛び降りてしまった。
「待って!!!!!」
届くはずのないその声は、遠くに向かっていく爆発の音であっけなくかき消されてしまった。
ひとり屋上に取り残された私は、慌てて立ち上がって屋上のフェンスへ向かう。
柵にしがみつき、下を見下ろすが、そこは車が通りすぎるただの道路だった。
(いない…どこにいったの…?)
少年を助けなきゃ。
そう思い、フェンスから手を放し、屋上の入口へと駆け出す。
久々に地面を蹴った足は、ふわふわとした感覚をまとったまま。
それでも急ぎたい一心で足を速める。
(助ける…助けたい…!)
その思いだけが、今の私を動かしていた。
その感情はどこから来るものなのかもわからず、ただひたすらに階段を駆け下りていく。
私もまた”何か”を感じていた。
1階にたどり着いて、乱れた呼吸をそのままに扉を開ける。
ーーーーバンッ!!!ーーーー
